また、ソーシャルメディアが映し出す他人のライフスタイルは、得てして現実とかけ離れた理想的なものだが、それが妬みや孤独の原因にもなっている。コロナ禍で若者のうつ病や不安、孤独の割合が増加したことも、人間関係の破綻要因であり、過小評価すべきではない。
孤独は、健康状態をさまざまなかたちで悪化させるリスク要因だ。各種研究では、他の各種要因を調整したうえでもなお、孤独が、心疾患や睡眠の質、炎症悪化、ウイルスに対する免疫力の低下と関連していることが報告されている。
高齢者と社会的孤立を巡る研究は、社会的な交流が不十分な場合は、死期が早まる確率が倍増すると結論づけている。「死亡リスクの上昇」に対して孤独が持つ影響力は、喫煙が持つ影響力と同程度だ。
ハーバード大学が80年以上にわたって実施した成人発達研究から、親密な人間関係は、お金や名声よりも、生涯にわたって健康を維持するうえでカギとなることが明らかになった。
この研究では、1938年にハーバード大学2年に在籍していた男性268人の追跡調査が行われ、のちにその配偶者や子どもも対象に加えられた。その結果、親密な人間関係は、心身の衰えを遅らせ、幸せに長生きできるかどうかを示す指標であり、その影響力は、社会階級やIQ(知能指数)、さらには遺伝よりも大きいことが明らかになっている。