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2021.09.09

理想の住まいは自分でつくる。VUILD「デジタル家づくり」への挑戦

VUILD代表 秋吉浩気(左)、BIOTOPE代表 佐宗邦威(右) 写真=曽川拓哉


デジタルデータをもとに創造物を制作する「デジタルファブリケーション」の技術を用いて、現地の木材を使い完成した合掌造りの建物は、環境を配慮した構造と高いデザイン性で2020年度の「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を受賞した。


デジタルファブリケーションによって作り上げられた宿泊施設「まれびとの家」(Photo Takumi Ota)

地域と家づくり、そこに未来がある。そう確信し、秋吉、井上、佐宗、孫の4人で夜な夜な議論を重ね、構想を形にしていった。

自分でプラモデルを組み立てるように


Nestingの特徴は大きく二つ。ひとつは、設計から組み立てまで、本来は専門家の領域だった家づくりの過程をでき得る限りユーザーに開放していること。もうひとつは、土地や木材、家に搭載する機能などの面で環境負荷を軽減していることだ。

Nestingを使った家づくりのステップは以下の6つ。

1. 日本各地のコミュニティホストが提供する敷地から土地を選ぶ
2. 理想の暮らしを妄想する
3. アプリで間取りを設計する
4. 予算に応じて、設備や建具など“住宅性能”を決める
5. 地域の木材を用い、3D木材加工機「ShopBot」で部品を出力
6. 専門家の指導を受けながら、プラモデル感覚で組み立てる

設計と聞くとハードルが高いが、専用のアプリで描くと、瞬時に家の形が立ち上がり、広さを変えたり、窓を増やしたりと自由自在にアレンジができ、例えば“窓からの景色”もわかるようになっている。

設備や建具を選択する段階で、断熱材の厚みまで細かく選択でき、最先端のオフグリッドテクノロジーを導入すれば、「エコハウス」にすることも可能だ。すべての項目において、見積もりはアプリ画面上で同時に確認できる点も魅力だ。



昨今、特に若い世代においては、所有よりシェアという志向があり、環境への配慮から次々と建てられる新築よりも中古物件が好まれる傾向がある。ただ、仲間を巻き込みながらエコも意識した家をつくれるとなれば話は別だ。また、コロナ禍でのリモートワークの浸透により、都市でなく地方に家を求める動きは確実に増えている。

そんな中で、今年5月にNestingβを発表すると、「こういう家なら建ててみたい」という反応が相次いだ。まずはプロトタイプとして、今年の10月に北海道で1棟目が竣工、並走して秋田県五城目町で5棟同時建設のプロジェクトなど、全部で約15棟進行している。

「五城目町は秋田市から車で1時間ほどの場所。このプロジェクトに参加する方の多くは、市内に家を持ちながら、自然の中で子供たちを安心して遊ばせたいという目的でセカンドハウスとしてつくります。彼らは異なる価値観を持つ人々と交流出来る場を、実際の場づくりのプロセスを楽しみながら実現しようとしています」(秋吉)
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編集=鈴木奈央 写真=曽川拓哉

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