──では、かつてのオリンピック・アスリートとして、オリンピックに一番大切な要素は何だと思いますか?
うーん、なかなか難しい質問ですが、アスリート個人としては「他者との明確な違い」を意識し、追求することが「勝利に繋がる」最大の武器だということを実感し、学んだと思います。さらに、パリ2024大会組織委員会会長としては、大会期間中だけではなく、大会へ向けての準備の段階から「ダイバーシティ」「インクルージョン」「ソーシャル・イノベーション」に特化し、そうした理念を重要視する対応が大切になってくると思います。
私たちはオリンピック・パラリンピックの新しいモデルを提唱するという壮大な目標に挑んでいますが、フランスで最後に夏季オリンピックが開催されてから100年という長い長い年月をかけて受け継がれてきた伝統を守りつつ、誰もが参加できる大会、とりわけ若い世代にもこの価値観を共有することは、決して簡単なことではありません。
大胆でクリエイティブなアイディア、イノベーションを生み、地球上で最も大きなこのスポーツイベントの価値を最大化するためには、チーム、関わる人たちを守りながら繋げていく「ダイバーシティ」そして「インクルージョン」が不可欠であり、これこそがスポーツの本質なのです。
Photo by Dave Winter / Icon Sport
──大会としてはもちろん、オリンピアン個人としてもダイバーシティの大切さに触れていただいたのは示唆深いと感じました。さて、東京2020の開催は終始 Covid-19との闘いでした。2024年パリ大会までには状況が改善されることを願っていますが、組織委員会会長という立場からCovid-19の対策についてはどのようにお考えですか?
東京2020は、日本の組織委員会の皆さんの努力をはじめ、日本国民の一人一人の理解と協力で素晴らしい大会となりました。心から感謝の言葉を贈りたいと思います。もちろん、2024年は現在の状況が改善されることを願っていますが、東京2020大会から得た教訓を活かし、どのような状況下に置かれてもしっかりとした運営ができるよう、準備を進めて行きたいと考えています。
──最後に2024年パリオリンピック・パラリンピックを楽しみにしているForbes JAPANの読者にメッセージをいただけますか?
多岐にわたるユニークな企画を用意して、皆さんをお待ちしています。2024年、パリでお会いしましょう。
トニー・エスタンゲ◎「パリ2024組織委員会会長」で元スラローム・カヌーの選手。2000年のシドニー大会、2004年のアテネ大会、2012年のロンドン大会で3つの金メダルを獲得した唯一のフランス人選手。エセック・ビジネススクール出身。