そんななか、日米関係を長く担当した元米政府当局者に、立候補が予想される顔ぶれの印象について電話で聞く機会があった。元当局者は「個人的な印象」と断ったうえで、「コウノさんの印象が一番良いかな」と語った。理由は「コウノさんは外相も防衛相もやっていて、経験が豊富だから」だという。
ただ、総裁選への立候補を宣言した岸田文雄元外相も外相経験が長い。「実務経験は甲乙つけがたいのでは」と尋ねると、河野氏は、よりコミュニケーション能力が高いのだという。確かに外相時代、様々な外国要人と電話やSNSを使って活発に交流していた。日韓関係が険悪になるなか、康京和外相(当時)とは、お互いに英語が得意ということもあり、親交を深めていたのは有名な話だ。
一方、河野氏はしばしば、強い発言を好む。19年7月には当時の南官杓駐日韓国大使との会談で、徴用工問題を巡って従来の立場を繰り返した南氏に「極めて無礼でございます」と発言したこともあった。ただ、複数の政府関係者は「河野さんの英語は、日本語と違ってキツい言葉遣いがないから、問題が起きない」と口をそろえる。
当時、この話を米政府当局者にふると、日米の文化の違いも影響していると語っていた。「コウノさんの英語スピーチをそのまま日本語でやっても、日本人には受けないだろう。彼のスピーチはショーマンシップが強い。でも、米国では当たり前なので問題ないからね」という説明だった。
米国人たちがコミュ力に注目するのは、菅義偉首相と比較している面もありそうだ。菅首相といえば、8月6日に広島で行われた平和記念式典での「原稿読み飛ばし」が有名だが、以前にもオンラインで行われた国際会議で1ページを丸々読み飛ばしたことがあった。
逆に、こうした失敗を恐れたのか、別の国際会議では慎重に原稿を「朗読」。菅氏に与えられた持ち時間を大幅に超えてしまった。以来、外務省では菅氏のための原稿を起草する場合、持ち時間に余裕が出るように短めの作成を求める指示が下ったという。菅氏は外交・安全保障に関心がないため、自分の言葉に咀嚼したり、要点をつかんだりするのに、最後まで四苦八苦したようだ。