ビジネス

2021.09.06 10:00

向かい風を追い風に。レストラン「sio」の風向きを変えた3つのアイデア


2. 1000円のサンドイッチと1万円の贅沢弁当


「#おうちでsio」と並行して、緊急で進めたのがテイクアウトの強化です。

緊急事態宣言下で、多くのレストランが提供中のメニューをテイクアウトのパッケージに詰め替えて販売する流れがありました。しかし、僕はそれでは不十分だと思いました。もっとテイクアウトに適したメニューがあると思い、3週間家に籠りテイクアウトをおいしくするための研究をしました。

そうして出来上がったのが、レストランの味わいを詰め込んだベトナムのサンドイッチ「HEY!バインミー」です。sioの店頭で販売したところ評判となり、1日300本も売れる人気商品に。わざわざバインミー専門店の店主が研修に来るほどでした。

ただ、それから1カ月もすると、お弁当のテイクアウトに飽き始めている方もいらっしゃるように感じました。そこで僕らがつくったのは、「自宅でレストラン体験」をコンセプトにした、1万円超えの「sio贅沢弁当」です。

重箱の上段には、13種類のおかずを仕切りなしで彩りよく詰め込み、下段には酢飯をベースにした「すき焼き重」や「ちらし重」を合わせました。「冷めてもおいしい」をコンセプトに、見た目、パッケージ、同梱された手紙やお品書きまで、細かくこだわりを詰め込みました。

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これもメディアなどで注目され、お客さまからも「これまで弁当で体感したことない感動があった」との声をいただき、間違っていなかったと確信しました。

お店にとっても良い効果が生まれました。「#おうちでsio」を通して僕らのことを知り、バインミーやお弁当を召し上がってくださった方が、店舗の営業再開後に「味の答え合わせ」をしに来てくださったのです。「お客さまのためにできることは何か」を突き詰めてやれば、お客さま側から選ばれるようになり、お店の売上にもつながるんだ、ということを実感しました。

3. 朝から全8品フルコースの“ディナー”体験


コロナ禍でのピンチは、これだけでは終わりません。2021年1月には、東京都の要請でアルコールの提供禁止、20時までの時短営業となり、夜営業の売上がなくなってしまいました。非常にまずい事態です。

そこで、20時〜24時の4時間分を朝の時間にスライドできないか、と考えました。空白の時間がもったいないと思ったのです。

世の中では、コロナ禍でテレワークが浸透し、与えられた業務を自分のペースで進めるという働き方も増えました。それぞれにあった時間の使い方ができるので、早朝から集中して仕事をする人もいれば、夜型の人もいます。

こうした背景から、sioでは「 #朝ディナー」 を提案しました。

朝食の定番料理であるオムレツやサラダをレストランクオリティで提供し、メインの魚とお肉を味わっていただいた後に、ご飯膳で炊きたてのお米の美味しさを体験してもらう。最後は〆のsioアイスと紅茶でホッとひと息ついていただくコースです。

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朝ディナーで提供しているオムレツ

この取り組みの肝は、「贅沢な朝食体験」「朝からコース体験」というキャッチーさ。ありがたいことに、オープンからずっと満席をいただき、たくさんの高評価もいただきました。

この“朝昼晩”の「三部営業」は、レストランの可能性を大きく広げました。次に開業予定のレストランは、はなから「三部営業」を念頭において設計しています。
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文=鳥羽周作

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