NY初の女性知事、キャシー・ホークルが宣誓式で見せたリーダーの「品格」

NY州知事 キャシー・ホークル(Michael M. Santiago/Getty Images)


リーダーの「品格」は過去の積み重ねでできている


この装いから読み取れる意志を踏まえた上で、ホークル知事の就任スピーチを紹介したい。特にスピーチの冒頭部分が印象的だ。


“On a cold January day nearly seven years ago, I took the oath of office to become your Lieutenant Governor.

I am humbled that the people of New York twice put their faith in me to fill this role, which required me to be prepared, if necessary, to serve as your Governor.

And now, that day has come”

“約7年前の1月の寒い日、私は皆さんの副知事になるための宣誓をしました。
私は、ニューヨークの人々が2度も私に信頼を寄せてくれたことを誇りに思っています。その役割には、必要に備えて、知事を務める準備をしておく必要がありました。

そして今、その日がやってきました”


副知事になるということは、もしかすると最初から知事になるよりもハードなのではないだろうか。補欠や代役のように、虎視淡々とそのポジションや役を狙うのとはまた違う。副知事としての実際の役割がある。

しかし、突然やってくるかもしれないその日のことも常に考えておかなくてはならない。それまで2番手として知事の伴走者をしていた立場から、急に看板になるわけだから。

また、今回なような状況での知事就任の場合、世の中から、期待だけでなく好奇の視線を向けられることもある。しかし、ホークル州知事の誕生が、新しい時代への第一歩であることは紛れもない事実だ。

ここでもう一度彼女のプレゼンスに注目したい。

肩くらいまである髪はごく自然かつエレガントに整えられていた。力強いメッセージを発する口元に目線を向けさせるリップカラーは、白のシャツドレスとのバランスも良いローズがかった潤いのある赤系で、顔色を良く見せ、表情を冴えさせていた。

声は低めで落ち着きがあり、表情も余裕があった。喋ってい際に顎が上がるのが少々気にはなったが、威圧的・高圧的には感じさせない。話す文章のセンテンスとセンテンスの間の区切れ目も明快で、その部分で軽く微笑むように柔らかく口元を整えていた。

非常に重要なのが、この口元。口元を見ればその人の過去がわかる。現在の口元は、その口から出る感情を持った言葉を発する行為の積み重ねによってつくられている。どのようなことを話し、どのような言葉を紡いできたかが隠せずに現れる部分だ。その人の過去が見える部分とも言える。

63年と長い年月を過ごしてきた彼女の口元は、口角も下がっていない。柔らかく唇を閉じるその表情に、筆者は清潔さを感じたとともに、丁寧に物事を仕上げていくことのできる人なのでは、という印象を受けた。
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文=日野江都子

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