ホークルが、スピーチの中で強く伝えていたのが「透明性」だ。背景には前任のアンドリュー・クオモ州知事がセクハラ問題で辞任に追い込まれた経緯がある。
“A new era of transparency will be one of the hallmarks of my Administration. To me, it’s very simple.We will focus on open, ethical governing that New Yorkers will trust”
“透明性の新時代は、私の政権の特徴のひとつとなるでしょう。私にとって、それはとてもシンプルなことです。ニューヨーカーに信頼される、オープンで倫理的な統治を目指します”
その「透明性」は、彼女の“装い”でより高めることができている。プライベート宣誓式では青いドレスを着用していた彼女だが、就任式では「全身“白”の装い」で登場。膝丈でベルトのついたシャツドレスを纏っていたのだ。
また、このような装いは“サフラジェット・ホワイト”と呼ばれ、約1世紀前に投票権を求めて全身白一色のドレスを着て戦った「サフラジェット(女性参政権者)」たちへのオマージュでもある。今回、宣誓式に参列した女性家族も白のドレスで登場した。
「全身白の装い」で多くの人が思い浮かべるのが、2020年11月に女性初の米国副大統領として選出されたカマラ・ハリスだろう。米大統領選勝利宣言に白のパンツスーツで登場し、スピーチを行なった。また、女性米国大統領候補として戦ったヒラリー・クリントンの白のパンツスーツ姿も記憶に残っている方が多いだろう。
女性初の米国副大統領として選出されたカマラ・ハリス/Getty Images
コロナ禍での新常識に合わせた「カジュアルダウン」
さらに、ここで注目すべきは、ホークルはスーツではなくドレス(ワンピース)を選んだことだ。スーツを着ない選択をした背景には、「必要以上に堅苦しく見せないため」という理由があるのではないか。
このパンデミックで、数年前から世界で広がっていたカジュアルダウンの流れが加速し、それまでスーツを当たり前のように着用していた人々でさえ、リモートワークで毎日の服装がカジュアルになった。
人々の目に映る「当たり前」が、堅苦しいものではなくなったのだ。そのような市民の前にスーツで登場する新知事は、共通言語・共通認識・共通感覚を持たない異世界の人と判断され、反発されるだろう。
襟のあるシャツドレスで甘くなりすぎず、きりりと清潔な知性を表現したホークルは、カジュアルながらもリーダーとしての格と品の良さを保っていた。