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日々向き合わなければならない課題を経営者同士で共有し、手を取り合って解決に導く「お悩みピッチ」(特設サイト)。2020年よりスタートした本企画、2021年3人目のお悩み人は、医師とファッションアートデザイナーという二足のわらじを履くフリーランサー、“Dr.まあや”こと折居麻綾さん。

フリーランスとして働くということは、業務に限らず、スケジュール管理やお金の管理まですべてを自分ひとりで担うことでもあります。なかでも、フリーランスとして2つの仕事を同時にこなし、日々奮闘する彼女がふと不安になったのは、なおざりになっていた「お金の管理」でした。明確なキャッシュフローを把握できておらず、経費と生活費も交じりがち。そろそろきちんと管理しなくてはと思ったまあやさんは、「お金の管理術」を相談しに来ました。






お悩み「お金の管理ってどうすればいい?」




2つの仕事をもつまあやさんは、いくつかの病院で勤務するフリーランス医師であると同時に、自身で立ち上げたブランドを手がけるファッションアートデザイナー。いま増えつつあるパラレルキャリア(複業)です。

病院勤務の合間を縫って服づくりに勤しみ、個展開催やイベント出展を精力的に続け、2018年には東京・巣鴨にアトリエ兼ギャラリーもオープンしました。翌2019年にはカナダ・バンクーバーで初めてファッションショーを開催するなど、医療と並行しながらファッション業界でのキャリアを積んでいます。これからも海外で個展を開催していきたいと考えています。

平日は東京で2つの仕事を代わる代わるこなし、週末は北海道での病院勤務という多忙な1週間。日中も夜間もせわしいながらも楽しく、毎日全力で過ごす日々のなかで、まあやさんは40代半ばを迎えて重大なことに気づきました。

それは、特にお金の勉強をしてこなかったこと。基本的な経費の扱い方から、同じ働き方をしている人たちからのアドバイスが欲しい——。今後のことを考えても、「なんとなくできてはいる」といったレベルではなく、しっかりと学んでおきたいと、「お金の管理術」を知るためにお悩みピッチの門をたたいたのです。

この日、まあやさんがピッチ用に用意してくださった資料はとてもカラフルで、見る人を楽しませたいという遊び心のあるものでした。多忙な1週間のスケジュールも、レインボーカラーで彩られたイラストで再現されることで、ご自身も楽しんでお仕事をされているのだということが伝わってきます。何より、とても丁寧に、控えめにお話をされるまあやさんの人柄に、参加している全員がすっかり魅せられてしまいました。



そんなまあやさんを助けたいと、お助け隊からは次々と多様な知恵が共有されます。そうしたなかで示されたのが、「法人化」への道。その先に見えてきたのは、“Dr.まあや”ならではの資金調達法。お金の管理から事業をステージアップさせるアドバイスへと発展していきました。


法人化&アウトソーシングで苦手なことは人に任せる




「お金の管理についてはフリーランス共通のお悩み。まずは皆さんに実践していることを聞いてみたい」とファシリテーターを務める齋藤潤一さんがお助け隊に順に声をかけました。

「用途別に銀行口座を分ける」「業務用資金のボーダーラインを設定する」など各々の管理術が共有されるなかで、中四国・関西エリアをめぐるローカルノマドとして活躍する事業プロデューサーの安川幸男さんが「私も管理が苦手なので、アウトソーシング」と一言。

 安川さん
「代表社員ひとりの合同会社をつくることで、法人と個人を完全に分けました。経費などのお金回りの管理はすべて妻と会計士任せです。苦手なのに自分で無理をしてする必要はありません」

同じ手段を取っているというのが、フリーランス歴27年の上阪徹さんでした。フリーライター・ブックライターとして長年にわたり執筆業を続けてきたなかで、「本業に集中できる」ことを大きなメリットとして伝えます。

 上阪さん
「フリーランスになって約10年で会社にしました。売り上げが大きくなってきたことで法人化を考えるようになりました。私の場合は、書く仕事なので仕入れもなく、かかる経費といえば事務用品代や資料代、交通費が中心ですが、まあやさんの場合、服づくりには仕入れがあるでしょう。ならばなおさら、法人化したほうが管理は簡単になるのではないかと思います」

経費の扱いは、「基本的に税理士さんと税務署の判断になる部分。あまり難しく考え込まなくてもよいのでは」と言い、続けて法人と個人事業主の違いについて指摘します。

 上阪さん
「法人になってわかったことは、個人のときよりもキャッシュフローの管理が大変なことです。例えば、前払いとなる消費税や源泉所得税など、ときどき必要になる、まとまった現金をプールしておかなければなりません。常に手元の現金を気にしながらやりくりしていくのはそれなりに大変ですから、銀行から大きく借りてお金をプールしておき、細かな経理はプロに任せたほうが本業に集中できると思いますよ」

法人化とアウトソーシング――具体的なアドバイスを聞いたまあやさんは、実は医師とデザイナーという複業生活を始めてから確定申告時には税理士に依頼しているうえ、法人化の可能性についても相談したことがあるそうです。

しかし、税理士から「現状で会社にするのはまだ早い」と言われてしまったこと、さらに金融機関に融資の相談をしたところ渋い顔をされた経験があることも思い切って打ち明けます。プレゼンテーション能力の低さを痛感したと振り返ります。

その様子を見て、ファシリテーターの齋藤さんは、「もしかしたら、事業モデルの見せ方や提案の仕方によって状況は変わるかも」と助言しつつ、ソーシャルメディア・ソーシャルアプリを展開する企業でキャリアを積み、地方移住してフリーランスとなった吉井秀三さんに管理法を問います。

 吉井さん
「主にクラウドツールを使っています。1週間のスケジュールが大変そうだと思ってイラストを見ながらお話を聞いていたのですが、同時に楽しそうだなとも感じました。なので、どんなツールを使うか考えるのではなく、お金を管理すること自体を楽しくするというのはいかがでしょうか?」

この吉井さんのアイデアを機に、話はお金の管理方法からお金の集め方へと大きく舵を切りました。


ファンを集めるストーリーづくり




新しい切り口での提案をした吉井さんは、移住した鳥取で、地域コミュニティやリモートワークなどをテーマに、事業推進者、新規事業企画、ライターといったさまざまな顔をもっています。そんな、これからのフリーランスの在り方を実践しているからこその枠にとらわれないアイデアは続きます。

 吉井さん
「例えば、領収書をまとめるのはつまらない作業ですが、ひとつまとめたらスタンプを押すとか、そのスタンプ自体をデザインするとか、保管の仕方を楽しむ方法を考えるんです。行為自体をクリエイティブなものにできれば、苦手なことから切り替えられるかもしれません」

ファシリテーターの齋藤さんが、「面白い!」と時を移さず声を張りました。それならば「法人化」だって、そのプロセスをコンテンツにするなど、楽しみながら実現できるのではと大盛り上がり。かつて時期尚早の判を押され、まあやさんの考えの外に置かれた法人化への道に光明が差します。

 安川さん
「銀行は実績をベースに、投資家は可能性をベースにしてお金を出します。つまり、銀行が合わなかったのであれば、個性際立つまあやさんの未来に対して投資してもらえる仲間をつくるのはいかがでしょう。極端にいえば、『まあやファンド』をつくってもいい」

「可能性を提示するのは、BtoBでなくBtoCでもいいですね」と、ファシリテーターの齋藤さん。CAMPFIRE出身で、地域の食や観光のPRをサポートする旅するおむすび屋・地域力創造アドバイザーの菅本香菜さんに、クラウドファンディングについてアドバイスを求めました。

 菅本さん
「やはり、ファンがいらっしゃる方との相性はいいですね。といっても、ものすごい数のフォロワーがいなくても大丈夫。必要なのはコアなファンです」

菅本さんは『旅するおむすび屋』の事業と並行して、今でもクラウドファンディングのプロデュースも手がけています。

 菅本さん
「クラウドファンディングでは、1人の支援金額は平均1万円と言われています。つまり500人のコアなファンがいれば500万円も集められる可能性があるということ。まあやさんはまあやさんのことが『ものすごく好き!』というファンが多そうなので、とても向いていると思います」

過去の融資相談での苦い経験から、まあやさんにとって同じくプレゼンが必要なクラウドファンディングは鬼門。興味はあるものの、「私の話を聞きたい人なんて誰もいないのでは……」と二の足を踏んでいるそうです。

菅本さん
「銀行に響くポイントと、クラウドファンディングで支援してくださる方々に響くポイントはまったく違います。それこそ海外での個展開催など、わかりやすくお金が必要になることとはとても相性がいい。応援したくなる人も多いでしょう」

菅本さんの話を聞きながらうなずいていた臨床心理士でエッセイストのみたらし加奈さんは、「私も似たような状況です」と自身がいま考えていることを教えてくれました。

 みたらしさん
「昨年mimosas(ミモザ)という団体を立ち上げ、今年NPO法人化し、心機一転でこれから再スタート! という段階に立っています。どうしたら応援してもらえるようになるのか。それを突き詰めて気付いたのは、多くの方に共感してもらえるような『ストーリー』が重要なのではないかいうことでした」

臨床心理士としてカウンセリングルームに所属しながら、社会課題解決に結びつく活動を続けてきたみたらしさん。応援してもらえる存在となるには、「ストーリーを伝えることも大切です」と続けます。

 みたらしさん
「まあやさんは個性的な髪型やファッションの印象が強いですが、私はそのうしろにあるストーリーのほうを深く知りたいと思いました。どうしてその色を選んだのか、なぜこういう服を作るのか、なぜ医師とファッションデザイナーになったのか。まあやさんの人生にしかない喜びや傷つき、乗り越えてきたことが必ずあるはず。そのご自身のストーリーを全面に出すことで、応援したい人たちを増やせるんじゃないかと感じました」

ファシリテーターの齋藤さんは、「ご自身の見せ方にお悩みはありますか?」と、まあやさんに問いかけます。すると、まあやさんは根底にある苦手意識について語り始めました。

楽しみながらお金が管理できる事業デザインを




数年前、偶然街で声をかけられて出演したテレビ番組を機に、まあやさんは何度かメディアに出演することになりました。自分自身にスポットライトが当てられ、あらためて気づかされたのは端的に思いを伝えられないこと。

以前、ファッションを学ぶために留学したロンドンで、つくりたいものをテーマにプレゼンテーションした際も思ったようにうまくアピールできなかったり、意見を求められても言葉が出てこないという経験をしていました。

そんな自身の特性をわかっているからこそ、言葉ではなく「思いをファッションで表現していきたい」という考えに至り、形にしてきたと言います。

今回の悩みである私用と事業経費の分け方やお金の管理術は、テクニックの分野です。解決するために使えるツールはさまざまありますが、本質的に解決するためにはまず、自分にフィットする方法を見つけ出すこと。まあやさんの場合、その魅力的な人となりが伝わるメディアを通して応援してくれる味方を増やし、資金面について相談できる相手を見つけることがその一歩になるのかもしれません。

法人化は視野に入れつつ、「まずはSNSでアドバイスをもらいながら、キャッシュフローの整理を楽しみながらやりたい」と、ピッチ終了後に言葉にしたまあやさん。

さらに、2022年に予定しているニューヨークでのファッションショー開催に向けて、費用をクラウドファンディングで募ることも考えていきたいとも。苦手分野でも「楽しむ」がマインドセットされたようです。

***

今回のセッションを受けて、お悩みピッチを主催するアメリカン・エキスプレス 須藤靖洋 法人事業部門副社長/ジェネラル・マネージャーは、「お金から人生、自分をどう表現するのかと話が展開し、お悩みピッチならではの面白さを感じました。当社には個人事業主向けカードもあります。私用と事業用でカードを使い分ければ、大事なお金がとても管理しやすくなりますよ」と、お悩みピッチの真価とともにアメックスならではの管理術を添えました。

Forbes JAPANの藤吉雅春編集長は、「資金を集めるためのストーリーづくり。そして言語化して説明することの重要性に、あらためて気づかされました」と、フリーランスに限らず誰もが学びとなるメッセージの数々を心に留めました。

後日、「普段接することがまったくない異業種の皆さんとのディスカッションは新鮮で、勉強になりました。生き方の多様化を実感しました」と、メッセージをくださったまあやさん。フリーランサーもまた、ビジネスオーナーとして日々ひとりで奮闘されています。Forbes JAPANとアメリカン・エキスプレスはビジネスオーナー同士の助け合いが広がっていくことを心から願い、これからもサポートしていきます。

CASE 3のお悩みピッチをビジュアル化すると…

▶︎「お悩みピッチ2021」特設サイト&これまでの「お悩みピッチ」はこちら



【お悩み人】

 
折居 麻綾(Dr.まあや) 氏(脳外科医・ファッションアートデザイナー)
慶應義塾大学病院の関連病院などで脳外科医として働きながら、ファッションの勉強のためロンドンのセントラル・セント・マーチンズで基礎を学ぶ。独自のファッションセンスで当直の合間に作品を製作。2013年にDr.まあやデザイン研究所を設立。2014年9月に初の個展を開催し、以降も勢力的に活動を続ける。同時に、脳外科医としても勤務を続けている。
▶︎Dr.まあやデザイン研究所


【お助け人】

 上阪 徹 氏(フリーライター・ブックライター)
アパレルメーカー、リクルートグループなどでの勤務を経て、フリーライターに。雑誌や書籍で幅広く執筆やインタビューを手がける。近年は、講演活動のほか「上阪徹のブックライター塾」を開講。近著に『人の倍稼ぐフリーランス46の心得』がある。
▶︎上阪徹のブックライター塾


 安川 幸男 氏(事業プロデューサー)
競馬予想会社、出版社などを経験したのち、ビジネスプロデューサー職でNTTデータに転職。15年間NTTグループにて新規事業開発に従事し、46歳で鳥取へ移住。鳥取県庁、鳥取銀行での勤務を経て、2018年に独立。ローカルノマドとして活躍中。
Facebook<https://www.facebook.com/yukio.yasukawa.5>


菅本 香菜 氏(旅するおむすび屋・地域力創造アドバイザー)
不動産会社での営業、『くまもと食べる通信』の副編集長を経て、CAMPFIREに転職。本業の傍ら2017年に『旅するおむすび屋』を立ち上げ、2019年に独立。食にかかわるイベント企画・運営、食材のPR、クラウドファンディングサポート等を行う。
Twitter<https://twitter.com/Kana314>


みたらし 加奈 氏(臨床心理士・エッセイスト)
総合病院の精神科に勤務したのち、ハワイへ留学。帰国後は、フリーランスの活動をメインに行いつつ、SNSを通してメンタルヘルスの情報を発信。現在は一般社団法人国際心理支援協会所属。NPO法人『mimosas(ミモザ)』の副理事も務める。
▶︎mimosas


 吉井 秀三 氏(新規事業企画・地方の働き方ライター)
東京のIT・ネット関連企業に20年間勤務。 SNS関連のサービス企画や、新規事業の立ち上げの仕事など、幅広く従事。2017年に地元・鳥取に移住。現在は株式会社ニットで、リモートで事業企画を行う傍ら、複業で地域コミュニティや自分史作成コミュニティ『Homeroom+』の運営を行う。
▶︎Homeroom+


【2021年お悩みピッチファシリテーター】

 齋藤 潤一 氏(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事/クリエイティブディレクター)
米国シリコンバレーのIT企業でブランディング・マーケティングディレクターを務めた後、帰国。東日本大震災を機に「ビジネスで地域課題を解決する」を使命に地方の起業家育成を開始。2017年より宮崎県児湯(こゆ)郡新富町役場が観光協会を解散して一般財団法人こゆ地域づくり推進機構を設立する。
▶︎一般財団法人こゆ地域づくり推進機構


「そう、ビジネスには、これがいる。」
アメリカン・エキスプレス
 

Promoted by アメリカン・エキスプレス / Text by 中村大輔 / Infographic by 渡辺 祐亮, cocoroé / Edit by 千吉良美樹

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