オルタナティブ投資の豊島、国内外のベンチャーキャピタル投資に取り組む渋澤、上場株をメインに扱う高橋と、異なる投資の観点をもつ3人ならではの多様な視点は、大いに海外投資についてのヒントを与えてくれた。
コロナ禍のアジアの経済状況は?
「地政学を考慮した中国・香港・台湾・シンガポールとのビジネスの付き合い方」に登壇したのは、北国からの贈り物代表取締役CEOの加藤敏明、北京朝倉時尚形象設計有限会社COOの朝倉禅、アジア市場開発代表の藤重太の3人。モデレーターを務めたのはSAKO建設設計工社代表の迫慶一郎だ。
迫がコロナ禍でのアジア各国の経済状況について尋ねると、台湾で35年にわたり活動してきた藤は次のように語った。
「台湾のコロナ対策のすごいところは、国内感染ゼロを徹底的に目指していることです。台湾は2003年にSARSで痛い目を見ました。その経験から、感染症は戦時体制をとらないと防げないことを学習し、政府も国民も徹底した法整備やガイドラインの作成を行ってきました。
今回のコロナ禍で、台湾がどれだけ社会を安定的に運営することに注力してきたかが見えるようになったと思います。例えば、台湾では国民から日本円にして3000円ほどのお金を集め、それを一度国庫に入れてから1万円の商品券にして国民に配り、年末までに使ってもらうという施策を行い、消費が活発化しました。政治と経済を分けて考えることは、平時には有効かもしれませんが、有事には歯車が狂ってしまう事態になりかねない。国の力は経済の力に繋がるものなので、大切だと感じます」
中国で会社経営をする朝倉は、急速に変化する経済状況についてこう分析した。
「コロナ禍になって中国では、国内で消費を完結する感覚が身に付いてきていると感じます。これまで手をつけていなかった場所や物をブラッシュアップして人に来てもらえる状況を整え、国内でいかに消費させるかに企業は注力しています。実際、商業施設や観光業などの開発も進んでいます。
我々が中国に進出した2004年当時は、まだ海外の力があってはじめてサービスや製品を完成させることができる状態でしたが、近年では自分たちでプロダクトをつくり、国内で消費を完結できるまでなってきた。また、ここ5年で一般の人たちでもブランド物に手が届くようになってきたことで、わかりやすいブランド志向から、商品自体のクオリティを見るように変化してきていると思います」
北海道を拠点にしてシンガポールや香港、台湾でビジネスを行う加藤は、コロナ禍での対アジア事業の現状をこう語った。
「海外の現地法人とパートナーシップ組んでオペレーションを回せるようにしていたことで、遠隔でも事業を止めることなく行うことができています。コロナ禍で日本企業がアジア各地から撤退するなか、現地での物産展などを続けられているので、逆に重宝されています。また、当社が海外進出を開始した10年前と比べると、富の二極化がアジア全体で進んでいると感じます。
コロナ禍で日本の脆弱な部分も露呈しましたが、反対に強みも見えたと思います。和食はヘルシー志向の流れにのって世界的なニーズがあったり、観光業でも、清潔で安全なイメージがある日本は、アジアからの旅行先としてニーズが高い。海外に出ることも大切ですが、アフターコロナを見据えて、日本でお客さんを待ち構えることも可能だと思います」
コロナ禍で変化するアジア各国の状況を知ることで、日本の立ち位置を再確認することができるようだ。
全50セッションの録画は今年の12月31日まで視聴できる。今回参加していない方はチケットを購入すると、閲覧が可能。次回のカンファレンスは、2022年2月10日〜12日に開催を予定している。