初号船は2025年
PowerXの事業ミッションは2つ。一つは洋上風力発電所から海岸に電気を運ぶ船を作ること。もう一つはその船に積載する大型蓄電池を作ることだ。
電気運搬船に関しては、2025年までに初号船「Power ARK100」を完成させる予定。ここには船舶用蓄電池を100個積載し、222MWhの電力が運搬可能となる。これは、一般家庭でおよそ22,000世帯が使う1日分の電力に相当する。
Power ARK100は、電気運搬専用ではなく、荷物も積載可能とすることで汎用性も拡げる。さらに船による国境を超えたクリーンエネルギー輸送の実現も可能となることから、グローバルな展開も視野に入れている。
船舶用電池(提供=PowerX)
「積荷同様、電気も目的地への運搬が可能となるため、例えば有事の際に、船そのものが非常用電源になる。特に災害時における電力供給は、医療機関にとっても喫緊の課題であり、人命救助にも役立つ」と伊藤は期待を込める。
大型蓄電池については、国内に蓄電池工場「Power MAX」を22年中に着工予定だ。さらに24年までに1GWh(一般家庭約10万世帯が1日に使用する電力量)、最終的には28年までに年間生産量5GWhを目指し、船舶用電池、電気自動車(EV)の急速充電用電池、グリッド用電池の製造、販売を行う。
この工場ではセルは製造せず、パッケージ化することで大量製造、低コストを実現できるという。
伊藤は、特にEV急速充電器電池に、大きな可能性があると考える。
EV用急速充電器電池(提供=PowerX)
「政府指針では、2025年には新車のすべてがEV車になる見込みで、課題は急速充電器の設置。現在全国に7893基あるが、30年までに30,000基の設置目標を掲げている。しかし既存の充電器はサイズも大きく、設置場所の確保や工事費用など課題も多い。それが電池であれば、場所も工事も不要。もちろん移動も簡単だ。しかも急速充電ができるため、これまで導入が進んでいなかった飲食店やコンビニなど、日々の生活の中でのちょっとした時間に充電できるようになる」