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Power ARK100(提供=PowerX)

脱炭素化を掲げる日本政府は、2030年までに最大38%の電力を自然エネルギーで賄うという目標を立てている。その実現のために注目されているのが「洋上風力発電」だ。

洋上風力による電力目標量は、現在の27万Kwから、2040年にはおよそ167倍の4500万Kwとしており、その期待の大きさがうかがえる。

「地球の71.1%が海。広大な海上を吹く風が作り出す、クリーンな電力には無限の可能性があると考えられる。船や海が好きだったということもあり、テクノロジーで日本のみならず世界に貢献できることがあると思い、設立に至った」

そう語るのが、2021年3月22日に株式会社パワーエックス(PowerX)を立ち上げた伊藤正裕(いとうまさひろ)だ。

伊藤は、元ZOZOで前澤氏と共に「ZOZOSUIT」や「ZOZOGLASS」など、さまざまなプロダクトの開発を手がけ、グループのイノベーションとテクノロジーを牽引してきた。

彼が新会社の事業として考案したのは洋上風力で発電した電力を、バッテリーに溜めて「船」で運ぶこと。知人から「運営する病院船を平時にどう活用したら良いか」と使い道を相談された際に着想したものだ。

この事業は、伊藤がZOZOを退職する際に前澤友作氏へ伝える機会があった。「次は何をやるのか」と問われ、伊藤が構想を説明すると、前澤氏は「面白いアイデアだ」と太鼓判を押したという。

海底ケーブル不要の「電気運搬船」


そもそも電気を船で運ぶ必要性は何か。

伊藤は「日本は遠浅の海が少ないため、着床式(風車の支柱が海底まで達している)の風力発電が可能な場所は限られている。今後、電力目標値を達成するためには浮体式(風車が海洋に浮いている)の普及が重要」と話す。

そこでPowerXが「電気運搬船」を開発し、浮体式の洋上風力発電の普及に貢献しようとしているのだ。

「電気を運搬するというのは全く新しい送電方法。海底ケーブルの敷設は不要で、より風の強い、より多くの電力が得られる、岸から遠い場所にも洋上風力発電所を設置することが可能になる」

つまり、船がケーブルに代わって送電の役割を担うことになる。

power ark100
蓄電池を積載したPower ARK100(提供=PowerX)

2018年度の日本のエネルギー自給率はわずか11.8%。うち85.5%は化石燃料によるもので、そのほぼすべてを海外からの輸入に依存しているのが現状だ。

船により輸入された炭素エネルギーを燃焼する発電方法ではなく、電気を電気のまま船で運ぶという新しい方法で、国内外の自然エネルギーの爆発的普及が見込まれる。

文=真下智子 編集=露原直人

起業家前澤友作

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