ベネチアではこれまでにも、似たような計画が何度か浮上していた。同市では観光シーズンになると、サンマルコ広場などの人気エリアから放射線状に広がる狭い通りが、大勢の観光客であふれかえる。そうした観光客の多くは日帰り客だ。この状況を目の当たりにしたことがある人なら、入場料の徴収は得策だと考えるだろう。これは何年も前に導入されるべきだったと言う人も多い。
ベネチアは長年、オーバーツーリズム(観光過剰)の典型となってきた。ユネスコから「危機にさらされている世界遺産」に指定される恐れもあったが、7月にジュデッカ運河とサンマルコ周辺のクルーズ船通過を禁止したことで、かろうじて指定を免れた。ただユネスコからは、来年の観光抑制に向けた措置についての状況報告が求められている。
昨年の新型コロナウイルス流行開始により観光客は激減し、ベネチアには一時的な休息がもたらされた。しかし、渡航規制の緩和により多くの観光客が戻り、最近では毎日8万人が訪れるようになっている。それとともに、訪問者を制限する計画も再び浮上した。
このほど発表された計画は、同市入りする人に対し、訪問時期やその日に見込まれる観光客数に応じて3~10ユーロ(約400~1300円)を課すという内容。同市と地元ベネト州の住民やその家族、6歳未満の子ども、同市内のホテルに滞在する人は対象から除外される。日帰り客はウェブサイトかアプリでチケットを購入し、ローマ広場や鉄道駅などの主要入り口に設置された入場ゲートでQRコードを提示して、市内に入る。
この策は今回こそ実現するだろうか? 住民はこれまで、市内の混雑やごみ問題に不満を抱いてきた。当局は日帰り観光客について、経済的な恩恵が少ない一方で、同市のインフラに持続不可能な負荷を強いていると繰り返し訴えてきた。新型ウイルスの世界的流行により、同市の人々は比較的静寂な時間を過ごすことができた。だが、多くの人はそれでも、入場ゲートの設置に懸念を抱いている。
ベネチア市議会議員で弁護士のマルコ・ガスパリネッティはラ・スタンパ紙に対し、「これは違憲で、欧州法に違反している。こうした措置は、サンマルコ広場のような限定された区域に導入することはできても、市全体に適用することはできない。ベネチアを、チケットを購入して入場できるテーマパークに変えるようなものだ」と述べた。
しかし現在の観光ブームを考慮すれば、この措置がついに実現する可能性はある。