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妖怪経済草双紙


官僚たたきには内なる敵もいる。15年ほど前も官僚バッシングが盛んだった。思い余った私は、日経新聞のコラムで、その行き過ぎと官僚システムの活性化について持論を書いた。掲載紙を開こうとすると携帯が鳴る。旧知の元官僚からで、その経験に基づく精緻で強烈な官僚批判が世に受けていた。発信力もある人物だった。彼は電話口で叫んだ。「こんなコラム、誰に唆されて書いたんだよ?」

がくぜんとした。私は自身で思うことを書いただけだ。誰の差し金でもない。言論抑圧も辞さないような語調を耳にしながら、これでは官僚たちはますますやる気をなくすな、と痛感したものである。

官僚は何かにつけ批判される。時々の政権の思惑に翻弄され、「有識者」の言動に翻弄される。将来の見込みも暗い。国民の公僕という言葉が空しく響く。しかも給料は高くない。

遠く明治初年の高級官僚は馬車で登庁し、仕事は半日ほど、駆け出しの若手官僚も人力車で通ったそうだ。報酬は財閥企業の3倍以上だったという。国づくりの大任にはそれだけの処遇が必要だった。

無論、時代は違う。150年前のノスタルジーに浸ってはいられない。だが同時に、この国はコロナ禍で大きな欠陥を晒し、屋台骨が揺らいでいる。改革必須にある点では幕末と共通する。

その改革の主要メニューのひとつが官僚システムの活性化だと思う。組織をいじる以上に、官僚一人ひとりのモチベーションを上げていく必要がある。

官僚に求められるノブレス・オブリージュは、組織論や理想論だけでは貫徹できない。エコノミクスとメンタルの充実こそが、「誇り高いがおごらない」官僚を生み出す。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。日本証券業協会特別顧問、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

文=川村雄介

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