若者のうつや不安、コロナ禍で2倍に急増

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一方、これまでの研究では、幼少期の子どもの健全な社会的・感情的発達に、安定したルーティンが役立つことが示されている。しかし、学校や保育施設、放課後の活動が休止と再開を繰り返す状況では、こうしたルーティンを保つのは難しくなる。

落ち着いた、予測可能な家庭環境も、子どもが自分を律する能力を身につけるのに役立つことが知られている。自律のスキルがあれば、子どもは感情に飲み込まれることなく、自分の気持ちをきちんと自覚してコントロールすることができる。しかし、コロナ禍による経済的な影響のほか、仕事と子育ての両立に苦慮する保護者や、子どもの世話にあたる人たちのあいだで心理的なストレスが増大することで、こうした環境を常に子どもに提供するのは難しくなっている。睡眠や食事、体のケアに関して、ルーティンを再構築し維持するよう気を配ることが、子どもたちの心の回復にとって重要になるだろう。

この問題が深刻さを増している今こそ、回復のための計画を実行に移す必要がある。

カナダにおける複数の小児病院が、メンタルヘルスに関連した入院件数が2倍に増えていると報告している。さらに、マクマスター子ども病院(McMaster Children’s Hospital)によると、小児による自殺未遂の件数が3倍に跳ね上がったという。

こうした事態を受けて、カナダの小児病院と啓発団体は、共同で「#codePINK」キャンペーンを開始した。このハッシュタグに使われている「コードピンク(Code Pink)」とは、小児救急の緊急事態を示す言葉だ。このキャンペーンでは、カナダの連邦政府および各州・準州の政府に対し、現在の緊急事態に対処するために直ちに行動を起こすよう呼びかけている。

同様の行動を促す呼びかけ、メンタルヘルスに関する医療サービスの拡大と、サービスを利用しやすい体制作りは、全世界的に急務となっている。

コロナ禍が若者たちのメンタルヘルスに与える悪影響は、学校や保育施設などが感染防止対策を確実に実施するべきもう一つの理由となっている。こうした対策としては、ワクチン接種、マスク着用や物理的距離の確保、検査と行動追跡方針の順守、そして、安全な施設再開に向けた換気や、施設の下水道検査によるウイルス監視などが挙げられる。こうした対策が実行されて初めて、子どもたちは、健全な社会的・感情的発達に必須の体験を取り戻すことができるはずだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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