「斜陽産業」の声に負けず、声に向き合うということ
アックスヤマザキの山崎一史社長に話を聞いてみた。
「『子育てにちょうどいいミシン』の開発は、実はコロナ禍の影などなかった2018年から進めていました。ミシンの市場が縮小してきた中でなんとかしようと思い、2019年7月の朝礼で『もう一回、ミシンに日の目を見させよう』と話したんです。かなり前から、子育てにターゲットを絞ろう、とは決めていました。
お母さんたちにとっての『手作り』のハードルは、昔に比べて上がっている。仕事を持つ、時間のないお母さんたちに、それをぐっと下げてあげたい、というごく自然な気持ちもありました。そして2020年の春に向け、その『子育て中の忙しいお母さん』という市場に向けてミシンを広めよう、と開発を進めてきた」
アックスヤマザキ 山崎一史社長
ところがそこに、コロナ禍到来。「店にマスクがない」状況も起こり、手作りマスクのブームが社会現象として起きた。
「もともとマスク用に開発した商品でもなかったので、急遽、動画でマスクの作り方をアップしたところ反響が大きくて──。『これならやれるかも、と思ってやってみたら意外にかんたんだった』という声も、新たなユーザーを呼びました。結果的に手作りにはまった、苦手だと思ってたけど案外簡単だった、楽しいという声を多く聞きます」
実は「子育てにちょうどいいミシン」は、2020年2月初旬発売の予定だった。入学式のある4月にはミシンの需要は落ち込むからだ。ところが、仕様にあれこれ懲りすぎて、発売が3月末発売になってしまったという。「どう考えてもタイミング的には遅かったが、でも、めげずにこのミシンなら、と自信を持って投入しました」。
「子育てにちょうどいいミシン」はメディアにも多く取り上げられたが、「中で、お目にかかる関西系テレビ局のカメラマンさんのなんと8〜9割が、『ミシンに興味がある』『ちょうどミシンを買おうと思っていた』、あるいは実際にミシンで縫ったマスクをしておられたのには驚きました。
──ミシンってまだあるの?といわれていたのに、今また、『ミシン』『ミシン』といわれていることが、本当にうれしいですね。
メーカーにお勤めで、同じように斜陽産業といわれて悩んでおられる方、経営者の方には、『斜陽斜陽』といわれても、あきらめず、いろんな声を聞いてその声に向き合い、世の中の役にどうやったら立てるかを考えていれば、きっとどこかで風が吹くので何とか頑張りましょう、とお伝えしたいです」