「一家にミシン一台」再びか。副業需要で220万円高級ミシンも登場

希望小売価格220万円(税込)、ブラザー工業発売「LUMINAIRE(ルミナイアー) XP1」

マスクで生活することが日常に定着してきた昨今。2020年は一時、マスクがドラッグストアから消えた。マスク不足を補おうと手作りマスクを制作する人が増え、需要が拡大したのが家庭用ミシンだ。外出自粛に伴い、「おうち時間」の充実を図るため、ミシン需要はさらに加速。21年も引き続き販売好調が続いている。


コロナ禍でミシン特需が到来


ブラザー工業は20年4月から12月期の家庭用ミシンの売上高が、前年同期比で5割以上増加。直近10年で最高額を記録したという。21年も家庭用ミシンの販売、副業⽤途での中⾼級刺しゅうミシンの販売が好調に推移。パーソナル&ホーム事業の第1四半期の売上収益は141億円を達成し、現地通貨ベースの伸び率プラス22.2%の増収を記録した。

21年10月に創業100周年を迎える老舗・蛇の目ミシン工業の決算発表では、21年3月期のミシン販売台数が20年3月期より49.9万台増加。日本では14.3万台、北米・欧州・大洋州では35.5万台と好調だ。20年の需要拡大を受けてタイ・台湾の生産工場で規模拡大を進め、生産増加に務めてきた。

顧客ニーズを捉えた「子育てにちょうどいいミシン」


しかしいざ家庭用ミシンを使って手作りマスクを作ろうと考えても、重くて大きい、器用でないと扱いにくい、といったイメージを持つ人も多いのではないだろうか。また、仕事をしながら子育てをしている現代の母親にとって、子供の通園通学グッズを手作りする時間を確保するのは困難だ。老舗ミシンメーカーのアックスヤマザキは、そういった既存概念を覆す「子育てにちょうどいいミシン」を発売し話題に。国内デザイン賞3冠、「大阪活力グランプリ」2020特別賞を受賞した。


ミシンメーカー、アックスヤマザキの「子育てにちょうどいいミシン」

このことが手伝ってか、関西系のテレビ業界のカメラマンたちの間で、「ミシン縫いの自作マスク」が大流行中だという。

「子育てにちょうどいいミシン」は、子育てや仕事で時間がない現代の親に向けて、簡単手軽にミシンを扱えることを重視。1万円程度とミシンの中では手を出しやすい価格設定だ。上級者向け機能はカットしており、必要最低限のスイッチで操作可能だ。

null
子育てにちょうどいいミシン。左:QRコードを読み取る。右:本棚に収納。

本体に貼ってあるQRコードを読み込めば、クックパッド等の料理動画のように、縫い方をスマホの動画で見ることができる。文字縫いやファスナー縫いなど、通園通学グッズに必要な動画が勢揃いしている。針ガードにもなるスマホスタンドを付属しており、動画を見ながらミシン操作がしやすい工夫も。

出し入れが面倒なことも考慮し、幅29.4×奥行11.5×高さ26.5cmの本棚に入るサイズ。ブラックのシンプルなデザインがインテリアに馴染むため、わざわざ押し入れの奥にしまう必要はない。重さも2.1kgと女性でも持ち運びが便利なのも嬉しいポイント。インスタグラムでもユーザーが作品を投稿するなど、広まっている。
次ページ > 「斜陽産業」の声に負けず、声に向き合うということ

文=齋藤優里花 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事