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フォーブス ジャパン ウェブ編集部 エディター


閉店した店舗に「デリバリーキッチンを作って」の需要も


「ゼロからの起業」家にとってのシェアキッチンの利用動機は明らかだが、BeChef利用者の多くは、レストラン経営者などで自前のキッチンを持つ事業主だ。そんな彼らがシェアキッチンを利用するのはなぜだろうか。戸邊氏は言う。

「ケースとしては2つあります。1つ目は、イートインも続けているため、店舗内に、テイクアウト、あるいはデリバリー用の弁当を作る場所がない。2つ目は、イートインは廃業しデリバリーキッチンに移行したい、つまり、新たにデリバリーで開業しようとするケースです」

「BeChef」には複数のスペースがあり、6社(者)が同じ空間をシェアするため、お互いに新しいレシピを試食し合ったり、情報交換をしあうこともある。その意味では、中食産業の「新しいコミュニティースペース」にもなっている。

また最近は、モールなどでレストラン営業の採算が合わず、やむなく店舗を閉めた事業主から、空いたテナントの有効活用をしたい、イートインの店舗だったところにデリバリーキッチンを開設したい、という相談を受けることも増えてきたという。

「とくに、物心のついたときから中食に親しんでいる、コロナ世代ともいえる小さいお子さんがいる家庭では、家族でモールへという休日に、レストランでのイートインでなく、買って食べる、外出中の中食──『歩き食べ』が新しい習慣になってくる可能性があります。さらにいえばそんな休日の最高においしい『歩き食べ』が、お子さんの子ども時代の忘れがたい思い出になるかもしれませんよね」



起業のハードルが下がれば、喫食風景も多様に──


戸邊氏は次のようにも語ってくれた。

「腕のある、思いのある料理人は本当に多くいます。でも、彼らにとって独立起業の障壁はこれまで高かった。コロナ禍も手伝って、ゴーストキッチンという形態が生まれ、選択肢が増えましたよね。キッチンから起業が可能になった。僕は、有能な料理人の『起業のハードル』をさらに低くするサポートをしたい。そして、彼らの成功の手助けをしたい。その思いは強いですね」

Uber Eatsを生んだ米国では、新たな中食プラットフォームとして、「複数店舗への注文が1回で可能」、つまり、複数店舗に注文しても配送料が1店舗分ですむアプリ「CITIZEN GO」が人気という。オーダー額の10%程度と決して小さくない配送料問題が解決できれば、たとえば家族がばらばらに注文した「タコス」と「パスタ」と「寿司」が1つの食卓に並ぶ「家庭内別食」が、ますます進むかもしれない。

起業のハードルが下がり、中食プラットフォームのサービス形態が多様になり、優秀な料理人から美食が小ロットでデリバリーされる──。そうなればまさに色とりどり、千差万別の食卓風景が実現しそうだ。

そして、もしかすると日曜料理人を自認する会社員の副業として「シェアキッチンを使った週末ゴーストレストラン」もあり、かもしれない。


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文=石井節子

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