「委任状」という選択肢
後見人に指名された人は、裁判所に毎年報告することを求められる。後見人は実際のところ、被後見人の生活のほぼあらゆる面に対する権限を持っている。医療記録を見ることができるし、メンタルヘルスに関する決断を下す権限も持っている(被後見人を精神療養施設に入れるという決断を除く)。金銭面や契約上の決断も下せるし、訴訟も起こせるし、家も売れる。また、被後見人が福祉給付を受ける資格がある場合には、申請しなければならない。
こうした状態を避けたいのなら、委任状(power of attorney:POA)が最適だろう。これは、医療もしくは金銭に関する決断に関して、自分の代理になる人にあらかじめその許可を与えられる法的文書だ。たとえば、自力で呼吸できず、人工呼吸器を必要とする状況になった場合にどうするかを決める人を指名できる。
誰なら適任?
そうした文書を用意せずに判断能力を失った場合は、あなたに代わる意思決定者の指名は裁判所に任される。そしてそこから、面倒なやりとりが始まることもある。
信頼できる友人や家族が後見人になると申し出ることもできる。だが、意見が割れたら? 誰が後見人になるべきかをめぐって争う場合には、莫大な裁判費用がかかる。それだけでなく、あなたが自分で決めていたなら選ばなかったであろう人が後見人に指名されるかもしれない。あなたと一度も会ったことがない人が指名される可能性さえある。とはいえ、誠実で信頼できる家族がいない場合には、まさにそれが望ましい人かもしれない──つまり、あなたにとって最善となるように尽くしてくれる中立的な第三者だ。
誰に自分の代理になってほしいのか。そして、つらい決断を下さなければならなくなったときに、誰にならその決断を任せられるのか、考え始めることをおすすめする。もしかしたら、妹がお金に強く、弟がたまたま医師の助手をしている、ということもあるかもしれない。その場合は、財産に関する委任状をつくり、医療についてはまた別の委任状を書くこともできる。
あなたの人生で、いちばん信用できる人は誰だろうか?