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2021.09.17

「モーションプランニングAI」搭載の自律型知能ロボットで倉庫・工場の無人化を目指すMujin 〜AI ジャイアンツ Vol.2

Mujin CTO兼共同創業者 デアンコウ・ロセン(出杏光 魯仙)

経営の中枢にAIを取り入れる。PwCコンサルティングが推進する「AI経営」が日本の企業にも浸透し始めている。同ファームマネージングディレクターの馬渕邦美は、キーマンとなる“AIジャイアンツ”がその成否の鍵を握っているという。いま、日本の企業で、誰がどのような変革を起こしているのか。日本のデジタル大国化を予見させる変革の現場を紹介する連載企画。第二弾は、物流倉庫や工場の物流工程を自動化する知能ロボットを開発し、急速に導入実績を伸ばしているMujinを紹介する。同社CTO兼共同創業者のデアンコウ・ロセン(出杏光魯仙)は、AIに対してどのような考え方をもっているのだろうかーー。


米国で学び産業用ロボット先進国の日本へ


「コンピューターが世界を変えたように、今度はロボットが世界を変えるんです」

MujinのCTOデアンコウ・ロセンはそう断言する。

アメリカ出身のデアンコウは、高校生の頃からコンピューターサイエンスやAIについて学び、米カーネギーメロン大学ロボティクス研究所で「自律マニピュレーションシステムの自動構築」を研究した。卒業後にその成果を社会実装しようと志し、その地に選んだのが日本だった。

「シリコンバレーで会社をつくるなどいくつか選択肢がありましたが、2番手以下の国では早く発展できないのではないかという懸念がありました。もっとロボット技術が進んだ国で起業しようと考え、新しい言語を学んででも日本に行こうと決意したのです」

世界の産業用ロボット市場シェアの上位を日本企業が占めていることがデアンコウを引きつけたのだった。単身日本に渡ったデアンコウは、東京大学大学院情報理工学系研究科情報システム工学研究室(JSK)で研究活動に従事し、2011年にCEOの滝野一征と共同でMUJIN(現Mujin)を設立した。まずは製品化を目指し、デアンコウは足しげく企業の現場を訪れ課題をヒアリングした。

「研究レベル、デモレベル、現場レベルでは、AIに求められる精度が天と地ほど違います。何が通用して何が通用しないのか、現場ではたくさんの学びがありました」

そうして経験と技術力を積み上げ、15年についにばら積みピッキング用ティーチレスコントローラを発売した。難しいとされてきた不規則に積み上げられたばら積みの自動化を、実現したのだ。その後、物流業界にも参入し、現在ではパレットに商品を自動で積載するパレタイザーはじめとしたさまざまなロボットを物流業界向けに提供している。


Mujin CTO兼共同創業者 デアンコウ・ロセン(出杏光 魯仙)

タスクを細かく分解して計画する「深層計画」


第3次AIブームは、深層学習(ディープラーニング)の登場によって始まったが、Mujinのロボットはそれを採用していない。デアンコウはその理由をこう説明する。

「機械学習やディープラーニングは、失敗が許される分野に適しています。例えばサーチエンジンで探しているウェブサイトが上の方に表示されなくても、大きな問題にはなりません。ところが産業用ロボットはそうはいきません。失敗によって生じるコストが高く、ちょっとでも事故が起きてしまったら大惨事になりかねません。我々は、確実性を追求する必要があるのです」

そこでMujinが採用しているのが「モーションプランニングAI」だ。これにより、一般的な産業用ロボットでは必須のティーチングも不要となる。

ティーチングはプログラミングの一種で、ロボットを稼働させるためには通常動作を細かく指示しなければならない。ロボットは、そのティーチング通り忠実に動くのだ。ところがMujinのロボットは、直感的に制約条件とタスクを設定するだけで、そこから先は、同社の開発したアルゴリズムが設定に従って自律的に計画を立て、効率的にタスクを遂行する。たとえ不測の事態が起きても迅速に対処するという。

「ディープラーニングでは、急に障害物が現れたときの回避が非常に難しいです。人工知能といっても、実はあまり知的ではないのです。Mujinのロボットは、本当の意味での人工知能を搭載しています。ロボットがセンサーを通じて空間を把握し、リアルタイムに周辺環境を計算し、条件が変わればそれに合わせてロボットの動作も変わるのです」

アルゴリズムが周辺環境を認識し、行動を計画して制御し、周辺環境が変化すると再び認識をする。そのループが繰り返されることで、ロボットは自律的かつ効率的にタスクを遂行する。それがコンマ数秒という驚異的な短時間で実行されるのだ。

「例えば地図アプリでは、目的地まで推奨されるルートにしたがって進めばいいわけですが、そのルートを細かく分解すると、次の道を右に曲がる、その前に右車線に変更するなど短時間にさまざまな計算をしています。目的地までにはそういったタスクがいくつも発生するわけですが、Mujinのロボットも同じです。タスクを分解してそれぞれの計画を立て、その計画を動力的に補正していきます。それを深いレベルで行うため、ティーチングより何倍も賢いのです。いわば『深層計画(ディーププランニング)』です」

デアンコウによると、これだけの処理を短時間で行えるのは、ロボットの動作を抽象化しているからだそうだ。

「人間は何かを掴む際に、障害物があるかどうか考えて確認してから掴む。ロボットに同じ動きをさせるときは、毎回、障害物自体を認識させることから始めなければなりませんが、機能を入れれば入れるほどプログラムは重たくなって、パンクしてしまいます。そこで我々は、障害物が発生するパターンを見つけることで抽象化し、プログラムを軽くしているのです。新たに“常識モジュール”をつくっている感覚です」

これまでに存在しなかった画期的なロボットだが、ユーザーを獲得するのは容易ではなかった。ロボットが自律的に作業を行うという発想が先進的すぎたのだ。Mujinにとってこの10年は、産業用ロボットの常識を変えてきた10年だった。デアンコウは、とにかく製品への信頼を高めることに注力してきた。

「失敗で生じるコストが高い現場に製品を導入してもらうために何が必要かと問われれば、それは『品質保証』という答えになるでしょう。例えばAからBに運ぶという単純なピッキング作業でも、もし箱が破損していたらロボットがちゃんとそれに気づいてくれるかなど、さまざまな異常を想定し対処できるようにしておかなければなりません。我々は複数のセンサーを組み合わせて、二重、三重に状況を確認することでそうした問題を解決しています。ロボットを信用するというお客様からの信頼をいただくことが重要であり、それはAI経営にも通じると思います」

そうしてユーザーからの信頼を勝ち取り、同社の製品は、いまでは多数の大手小売企業で導入されている。



現場の無人化がイノベーション力向上に寄与


人間のように臨機応変に作業を行う−−まさに夢のようなロボットだが、Mujinが目指しているのは人間的な知能ではない。デアンコウが追求するのは機械知能、すなわち「MI(マシンインテリジェンス)」だ。

「AIは人間をコピーすることを目指してきましたが、そもそも人間をコピーする必要があるのでしょうか。機械的知能のほうがミスなく、確実性を追求できます」

デアンコウが思い描く世界は、そうした信用できるロボットだけで作業が完結する無人倉庫・工場の実現だ。現場の労働力が必要なくなれば、人的資源を別の分野に振り分けられるはずだとデアンコウは提言する。

「人間が重労働から解放されれば、もっとクリエイティブな仕事に従事することができます。それによって、新たなイノベーションが起きるかもしれません。人間は本来、そういうところに頭を使うべきであり、ロボットがそれを推進するひとつの手段になります。現場を管理する人も、知能ロボットの能力が上がれば、すべてを遠隔でできるようになります。何かトラブルが起きても、遠隔で解決して復旧することができるのです。そういう、人間が現場で臨機応変に対応しなければならない物理的世界をデジタル化することも、ひとつのDXだと思います」

Mujinが目指すビジョンはモノづくり大国・日本の復権だ。若い優秀な人材が製造・物流業でよりクリエイティブな力を発揮し、新たな価値を創造していく。その世界は、そう遠い未来ではないかもしれない。


であんこう・ろせん◎アメリカ出身。高校でコンピューターサイエンスと人工知能について学び、米カーネギーメロン大学のロボティクス研究所で「自律マニピュレーションシステムの自動構築」のテーマで博士号を取得。2009年に来日し、東京大学大学院情報理工学系研究科情報システム工学研究室(JSK)で研究活動に従事。11年にMUJIN(現Mujin)を共同設立。

Promoted by PwC Japan / text by Fumihiko ohashi / photographs by Shuji Goto / edit by Yasumasa Akashi

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