実用化が加速する空飛ぶクルマ、保険は自動車用か航空機用か?

Ore Huiying/Getty Images


保険会社も試験飛行や実証実験を後押し


ただ、気になるのは「保険」のことだ。いざ事故に遭ったとき、リスクの性格がいままでとは異なるため、現状の「自動車保険」では対応できないかもしれない。空を飛ぶなら「自動車保険」ではなく「航空保険」の範疇になるのだろうか。

調べてみると、実証実験中のいまの段階から、すでに保険会社は動き出していた。たとえば、東京海上日動火災では、2019年3月から、「空飛ぶクルマ」の試験飛行や実証実験を行う企業向けに、機体に発生した損害を補償する機体保険や、機体または実験施設の所有、使用または管理に起因して発生した事故による賠償責任などを補償する商品を提供している。

開発企業が安心して開発・実証ができる体制を、保険の面からサポートし、実用化に向けた最先研究開発を後押ししているという。そして今後の実用化にあたり、保険制度の構築や責任主体が不明瞭ななかでの被害者の救済制度をどうしていくかなどのさまざまな整備を分析・検討している段階だ。

また、三井住友海上火災は、2020年から空飛ぶクルマの開発に取り組むドイツのボロコプターに出資する形で、保険の商品設計を進めている。また、2019年7月にJALと提携し、空飛ぶクルマの運航における確実な管理、保険およびリスクマネジメントの研究・開発等を協力して進める方針だ。

さらに、あいおいニッセイ同和損害保険は、アメリカの有力企業ジョビー・アビエーションに出資する形で、空飛ぶクルマの専用保険を検討中だ。同社では現在、自動車を安全に運航すると保険料を割り引く仕組みの自動車保険(テレマティクス保険)を展開しているが、そこで得られたノウハウを空飛ぶクルマにも活用するための検討に入っている。

3社とも、2025年の大阪・関西万博での空飛ぶクルマの活用に向けて、大阪府が2020年11月に設立した「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」に参画。関係者間で精力的に協議や実証実験を重ね、国の官民協議会の議論に資する具体的な提案を行っている。

このように、保険会社は、すでに空飛ぶクルマの実現に向けた取り組みの加速をサポートする形で関わっていた。そのような保険会社の動きを見ていれば、どのようなリスクがあるかも見えてきそうだ。

では、空飛ぶクルマには、自動車と飛行機のどちらの保険か適用されるのか。これまで日本国内でも、やはり、空飛ぶクルマは航空機に該当するか、新たなカテゴリーが必要なのかといった議論が進められてきたそうだ。

ちなみに直近の2021年5月21日に開催された「第7回 空の移動革命に向けた官民協議会」において、国土交通省がまとめた資料では、空飛ぶクルマは「人が乗って航空の用に供することから、航空法上の航空機として整理」される方向で検討されている。

「空飛ぶクルマ」の保険も、それに沿うかたちで組成されていく見込みのようだ。どんな保険になるのか、まだまだ目が離せない。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文=竹下さくら

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