実用化が加速する空飛ぶクルマ、保険は自動車用か航空機用か?

Ore Huiying/Getty Images

もうすぐ、クルマが空を飛ぶ時代がやってくる。マユツバな夢物語ではなく、いま、世界中で開発に拍車がかかっているのだ。

日本でも2018年に経済産業省と国土交通省が事務局となり「空の移動革命に向けた官民協議会」が立ち上がった。ロードマップの策定が開始され、法整備に関わる議論も始まり、2025年の大阪・関西万博での実用化を目指して急ピッチで開発が進められている。

2025年の実用化後は、まずタクシーのような利用から始まり、2030年代には一般家庭への普及も視野に入ってくるという。期待でワクワクが止まらないが、つい、いざ事故が起きたときの保険はどうなるのかということに思いが至った。

「空飛ぶクルマ」の定義とは


初めて空飛ぶクルマの話を聞いたとき、昔観た映画を思い出した。車型のタイムマシンでかなりの助走空間が必要だったから、あんなものが飛び交う世界の実現は難しいだろうと考えていた。

しかし、世界では一見したところスーパーカー風の乗用車が航空機に変形して空を飛ぶ、有人飛行に成功したクルマもすでに出てきている。

空飛ぶクルマに明確な定義はないものの、国土交通省の資料によれば、日本では「電動」で「自動(操縦)」で「垂直離着陸」する移動手段がイメージされている。日本の国土の特徴を踏まえ、都市の渋滞を避けた通勤、通学や通園、離島や山間部での新しい移動手段、災害時の救急搬送や迅速な物資輸送などでの活用が期待されているからだ。

このタイプの空飛ぶクルマは、諸外国では、垂直離着陸機はVTOL(Vertical Take-Off and Landing aircraft)と略称され、電動タイプは「eVTOL(イーブイトール)」と呼ばれている。

ヘリコプターと比べた場合、「電動」であることから部品点数が少なく、整備費用は安く、騒音は小さく、自動飛行との親和性は高い。また、「自動(操縦)」であることは、操縦士が不要になることから運航費用を安く抑えられる。加えて「垂直離着陸」できることにより、離着陸場所の自由度が高いというメリットがある。

2020年に有人飛行の公開試験に成功した日本の開発会社「SkyDrive」の話では、車2台分程度のスペースで大丈夫だという。

まずは、都市部での送迎サービスや離島や山間部での移動手段、災害時の救急搬送などの活用が期待されて進められているため、プライベートでの個人利用はまだ先の話だが、着実に実現化に向けて進められている状況だ。
次ページ > 自動車保険か、それとも航空保険か

文=竹下さくら

ForbesBrandVoice

人気記事