セイラーは、連邦政府の金融緩和策が年間15%のペースでドルの価値を下げていると考え、ビットコインの購入を“防衛手段”に位置づけている。「ドルからエネルギーが吸い出されているため、価値が暴落している」と、彼は語る。
「株式や債券、不動産をはじめ、金の裏付けのない通貨ベースのありとあらゆる資産は価値が下落しています」
セイラーは、自社が本業でアマゾンやネットフリックスに匹敵する成長を実現できないとみて、自社の成長を多額の借入金と引き換えに、ビットコイン上場投資信託に委ねたわけだ。実際、マイクロストラテジーの株価は12カ月間で270%急伸した。本誌の調べでは、自社のバランスシートにビットコインを計上している上場企業は、少なくともほかに25社はある。
ただし、今年の「ブロックチェーン50」に選ばれた企業の大半は投機目的でビットコインを購入しているのではない。暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンを導入したい、と考えているのだ。
例えば、米複合企業ハネウェルはブロックチェーンを使って中古の航空機部品の買い手と売り手を結び付けている。これまでに、ボーイングとルフトハンザを含む売り手117社がハネウェルのプラットフォームに登録し、20年には約6500万ドル相当の部品が売買された。総売り上げ370億ドルのハネウェルにとっては微々たる金額ではあるが、同社の幹部は、自社のプラットフォームがいつか中古航空機部品のオンライン取引で業界全体を牽けん引いんするようになることを期待している。
南アフリカの木材パルプ最大手「サッピ」は、ブロックチェーンを使って持続可能な森林から、パルプを衣料用繊維に加工する製造工場、さらには、製品が小売業者の手にわたるまで追跡を続けている。これにより、同社のTシャツや下着は、製造のために天然林が伐採されていないことを証明できるので、小売業者はプレミア料金で販売することが可能だ。
入選した企業が使うブロックチェーンのうち、5つの技術が突出している。25社が、非営利団体リナックス・ファウンデーションのブロックチェーン部門「ハイパーレジャー」が提供する無料ソフトウェアのいずれかを使っていた。22社が、ブロックチェーン「イーサリアム」を導入。9社が、JPモルガン・チェースが開発し、現在はブロックチェーン企業コンセンシスが運営する「クオラム」を利用。6社が、ブロックチェーン企業R3が開発した「コルダ」を使っていた。もちろん「ビットコイン」を使っている企業も多く、リストに入った11社が利用していた。