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2021.08.30

先を行く世界の大企業たち。米Forbesが選ぶ「ブロックチェーン50」

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進むブロックチェーンの「商品化」


米調査会社ガートナーによると、20年11月の時点で米国では1000件以上の企業向けブロックチェーン・プロジェクトが進行中である。大半はまだ初期の実験・検証段階にあるが、14%は商品化されているか、その間近だ。調査会社フォレスター・リサーチはさらに楽観的で、進行中のプロジェクトの実に30%が今年中に販売可能になる、と予測している。

デジタル資産をめぐる熱狂の中でも重要なトレンドの一つが、大手企業が雪なだれ崩を打って暗号資産の「カストディ(保管)」業務に乗り出していることだ。これまでに巨額の暗号資産が“行方不明”になってきたことが、法人参入の障壁となってきた。問題は、詐欺や盗みだけではない。銀行口座の保有者がパスワードを忘れた場合は、銀行にリセットしてもらえば済む。ビットコインの場合、銀行は必要ない。「プライベート・キー」と呼ばれるパスワードを忘れてしまうと、回収が不可能なのだ。

20年7月、米通貨監督庁が、暗号資産のカストディ業務を銀行に認めると発表した。これを受けてデジタル資産を保有する金融機関は、暗号資産カストディ業務に殺到している。スペインのBBVA銀行、オランダのING銀行、スイスの証券会社SIXなど6つ以上の機関が現在、暗号資産カストディ業務を提供している。

暗号資産カストディ業務を提供している金融機関は、規制の多いデジタル資産の現状では、“橋渡し”をできる絶好の立場にある。前出のノーザン・トラストも、ブロックチェーンを使った債権分割と小口販売の事業でサービシングとカストディ業務を提供するため、シンガポールのフィンテック企業「ボンドエバリュー」と戦略的パートナーシップを結んでいる。20年8月、このパートナーシップを通じて、ブロックチェーン・ベースの債券取引が行われた。

シンガポールの農業総合商社「オラム」が発行した額面金額3億ドルのデジタル債券に4.375%の利回りがついたこの取引は、通常なら決済まで2日かかるところだが、わずか数秒で完了した。

「デジタル資産プログラムへの投資は今後も幅広く続けていく」と、ノーザン・トラスト銀行のジャスティン・チャップマン執行副社長は言う。

「テクノロジーもあるし、理解も進んでいる。顧客の用意は万端です」
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edited by Michael Del Castillo, Janet Novack & Matt Schifrin photograph by Christie Hemm Klok

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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