ビジネス

2021.08.30

先を行く世界の大企業たち。米Forbesが選ぶ「ブロックチェーン50」

Getty Images


“投機”ではない、「合理的な選択」


もっとも、今すぐに使おうと考える人はいないだろう。パンデミックが始まって以降、ビットコインの価値は4803ドルから21年1月半ばには3万6000ドル以上に急騰しているからだ。

暗号資産が将来の通貨になると確信しているのはシュルマンだけではない。現在、業務効率化に加え、桁外れのリターンを利用した利益拡大を図ろうと、ビットコインと、その基盤技術のブロックチェーンを使っている大手企業は数百社に上る。

JPモルガン・チェースといった金融機関から航空機メーカーのボーイングに至るまで、この技術を使って意義あるプロジェクトを進め、フォーブスの「ブロックチェーン50」年次リストの要件を満たす大手企業がかつてないほどに増えた。

今年のリストには、アジアから5社、オーストラリアから1社、アフリカから1社など21の新顔が含まれている。例えば、韓国のメッセージアプリ大手カカオは、売買のほか、リワードと交換に担保型融資が可能な暗号資産「クレイ」を提供。インドのIT大手テックマヒンドラは、ブロックチェーン技術を使って、数百万人のスマートフォン利用者がスパムメールを排除できるようにしている。

注目すべきは、今年のリストに「グーグル」と「フェイスブック」が含まれていないことだ。グーグルは、ブロックチェーンを用いた限定的な検索エンジンから大きな進歩が見られず、フェイスブックは、19年夏に意欲的なデジタルコイン「リブラ」の導入を発表したものの、大きな反発を招いて名称を「ディエム」に変更して再出発。まだ発行には至っていない。

対照的なのが、ジャック・ドーシー率いるスクエアだ。送金アプリ「キャッシュ・アップ」の提供を始め、20年10月には約5000万ドルを投じてビットコインを購入している。ほかにも、ボーイングがブロックチェーンを搭載した、ドローンの空域管理ソフトウェアプラットフォーム「スカイグリッド」を立ち上げている。企業や超富裕層を顧客に抱える米資産運用会社ノーザン・トラストは、暗号資産のデジタル・ウォレット・サービスに乗り出した。

やはりコロナ禍を機にビットコインを導入したのが、米ビジネス分析ソフトウェア開発企業の「マイクロストラテジー」だ。同社のマイケル・セイラーCEO(56)は20年、借入金6億5000万ドルを含め11億ドルを投じてビットコインを購入した。現在、その価値は26億ドルとなり、短期国債などの資産と並んで同社のバランスシート(貸借対照表)に計上されている。
次ページ > "防衛手段"としてのビットコイン

edited by Michael Del Castillo, Janet Novack & Matt Schifrin photograph by Christie Hemm Klok

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事