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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

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有象無象の暗号通貨に賛否あることは否定できない。廃れていくものもあるだろう。ビリオネアも入れ替わっていくはずだ。しかし、その基盤となる理論と技術がかつてないビジネスの在りかたを創っているのも事実だ。次代を築こうとしている50社をご紹介しよう。


2020年3月、新型コロナウイルスが全米に広がるなか、米カリフォルニア州パロアルトの自宅で自粛生活を余儀なくされていた簡易決済サービス「ペイパル」のダン・シュルマンCEO(63)は、今回のパンデミックが一生に一度のビジネスチャンスをもたらすと見抜いていた。

14年に引き継いだペイパルは、創業から20年にわたりキャッシュレスな世界の実現に取り組んできたが、近年、成長に陰りが見え始めていた。創業間もない02年、ペイパルは「イーベイ」に買収され、その後10年間は売り上げが年率平均38%のペースで伸びたが、再び独立すると、成長は半分のペースにまで落ちていた。ところが人々が自宅にこもるようになったことで、食料品の買い出しや銀行取引などでオンライン・ショッピングと電子決済が日常生活で不可欠になったのだ。

ペイパルのアクティブ・アカウント数は増え始め、20年末には5000万件以上増えて3億6100万件となった。20年4月、米政府が景気対策として約2690億ドルの現金給付を決めると、ペイパルは銀行口座をもたない国内の700万世帯への給付に一役買った。銀行口座をもたない家庭への給付を進めながら、シュルマンは「一刻の猶予もない」と感じていた。

「これまでなら3~5年かかっていたことが3~5カ月で進むという加速化現象が起きていた」と、シュルマンは話す。

「この先どうなるのか、そして手をこまねいていると何が起きるかをペイパルが示さなければ、と考えました」

ペイパルのシステムは、銀行が導入している従来型のものと統合されているが、取引完了までに10日もかかる。シュルマンは、もっといい方法があることを知っていた。ブロックチェーン技術を使えば、「ビットコイン」のような暗号資産の電子送金が容易なうえ、はるかに短時間に完了する。もちろん、銀行口座をもたない人が暗号資産を使ったり、紙幣に換金したりするにはインターネット接続が必要だが、それはペイパルの現在のサービスでも同じだ。

各国の中央銀行が、独自の暗号資産(CBDC)を発行する日は目前に迫っている。そうなれば、政府は給付金を国民に直に振り込めてしまう。国際決済銀行によると、70%の国の中央銀行がCBDCを検討しており、中国やスウェーデン、ウルグアイなど独自のデジタル通貨を近く発行予定の国もある。近い将来、米政府ですらペイパルの競合になりかねない。

シュルマンの号令の下、ペイパルはただちにビットコインやブロックチェーンに詳しい人材の採用にとりかかった。20年10月、シュルマンは、ペイパルのアカウント経由で直接、暗号資産の売買や保有ができるサービスを発表。ペイパルに加盟する世界各国にある2600万社との決済に、暗号資産が使えるようになった。

edited by Michael Del Castillo, Janet Novack & Matt Schifrin photograph by Christie Hemm Klok

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