今年の春にオンラインで行われた東京藝大アートフェスなど、若手の作品に触れられる場を回り、自分の足で才能の発掘に努めている小林氏。なぜ、会社員だった彼がアートビジネス界に入ろうとしたのか、話を聞いた。
──広告代理店勤務中に現代アートコレクターとなり、退職後に渋谷区松濤にギャラリー「biscuit gallery(ビスケット ギャラリー)」を設立。若手現代アーティストの支援に尽力される小林さんですが、そもそもアートに関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
実は引っ越しのときに購入した絵が自分の生活を豊かにしてくれるという実感を手にしたという極めて個人的な理由が僕をアートの世界に導いてくれたんです。そこからコレクターの域を脱してアートをビジネスとして捕らえ、特に現代アートのアーティストを支援する事業を展開していきたいと考えるようになりました。
──特に今はコロナ禍でアーティストが活躍の場を失っている状況だと思いますが、そんな中で、なぜアートビジネスの世界に入ろうと思ったのでしょう?
もちろん、アートに関心があったからこそギャラリー経営を立ち上げたわけですが、さまざまなクライアントと接しているうちに、アートの歴史を含め、アートビジネスそのものに興味が湧きました。日常生活の延長線上でアートをビジネス化しているギャラリーが皆無に等しいという現在の日本のマーケットの中で、まずは「アートは敷居が高い」というイメージを払拭して、アートビジネスそのものを変えてみたいと思いました。
(biscuit gallery)
──今までアートに関心がなかった層でも、コロナ禍の影響により自宅で過ごす時間が増える中、アートを購入する人が増えている傾向が出てきているようです。そうした状況下、アートへの投資も含め、アートブームが訪れているように見受けられますが、どのようにご覧になりますか。
アートビジネスの底辺が広がり始めているのは確かですが、日本はまだまだ小さなマーケットで、現在はその成長途上にあると感じています。だからこそ、今は僕自身もアート事業を展開しながら日々学んでいるといった感じです。これから先は、本業を持ちながらアートコレクターとしてアートを副業としてとらえる人たちも増えてくるのではないかと思っています。
アートの世界が更に身近になることによって、アートからビジネスのヒントを学ぶこともできるし、そういった観点からもアートは今までの既成概念から少しずつ進化してきていると感じていますし、コロナ禍はそうした新しい気付きや多様性の概念を私たちに与えてくれたと思っています。