新型コロナウイルスの家庭内感染について、カナダのオンタリオ州公衆衛生局が行ったこの調査の結果が改めて強調するのは、間もなく新学期を迎える子どもたちと、一緒に暮らす大人たちを感染から守るための対策の重要性だ。
医学誌JAMA小児科学に発表されたのは、オンタリオ州で2020年6月1日~12月31日に確認された感染者を対象に実施した調査の結果。研究チームはすべての家庭内感染のケースについて調べ、世帯内で最初に感染したのが18歳未満だった約6280世帯を特定。このうち、最初の陽性者の確認から2週間以内に同居者が感染した世帯について、詳しく調査した。
「子どもの感染は少ない」は誤解
新型コロナウイルスのパンデミックの初期において、公衆衛生の当局者の多くは、子どもたちの感染リスクや感染を拡大させるリスクは低いとみていた。だが、米国で8月12~19日までに感染が確認された未成年者は、18万175人にのぼっている。感染者全体に占める未成年の割合は、22.4%だ。当局者らの初期の見方は、誤っていたといえる。
米ヴァンダービルト大学のティナ・V・ハータート教授(疫学・呼吸器学)はこれについて、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「専門家たちには、子どもたちは自宅から離れないものという思い込みによるバイアスがかかっていたのだろう」と述べている。
それは、「子どもたちには近所の人たちと遊ぶことさえ避けることが推奨され、(一時閉鎖されたため)学校にも、デイケアにも通っていなかった」ためだという。
オンタリオ州公衆衛生局の調査では、家庭内感染が起きた世帯の大半において、感染の連鎖は子どもで終っていたことが分かった。また、調査した世帯の27.3%において、子どもは少なくとも1人の同居住者を感染させていたという。
家庭にウイルスを持ち込む可能性が最も高いとみられるのは14~17歳で、家庭内感染のケース全体の38%を占めていた。だが、家庭内で感染が広がる確率は、最初に感染したのが3歳以下の乳幼児だった場合の方が、14~17歳の子どもだった場合と比べ、約40%高くなっていた。
こうした結果がもたらされる原因の一部は、同居者たちの行動によって説明することができる。例えば、乳幼児は感染しても隔離することができないため、同居者が感染する可能性はより高くなると考えられる。
また、10代の若者たちは密な環境で時間を過ごすことが多く、一緒に飲食したり、飲み物や食べ物を分け合ったりすることも多いため、その場にいた誰かが感染していれば、そこから各自の自宅にウイルスを持ち帰るケースが多くなっているとみられる。
12歳未満の子どもたちがまだワクチン接種を受けておらず、感染リスクが非常に高い状態にある中、学校でのマスクの着用と、物理的な距離の確保を確実にすることが重要だ。
さらに、換気をよくすること、検査を受けること、接触者の追跡を行うこと、そして排水の調査を行うことも、子どもたちと保護者を守るための重要なツールとなる。