招致決定から8年あまり、日本が東京五輪で得たものは

2013年9月7日撮影、Getty Images


現時点では、日本経済はコロナ禍の影響から回復しつつあるとの見方もある。実際、日本が第2四半期に達成した年率換算で1.3%増という成長は、悪くはない。しかしその成長は、米国と中国の経済の回復によって生まれた幻影だ。デルタ株が猛威を振るうのに伴い、米国と中国の成長は、そしてひいては日本の国内総生産(GDP)は、フラットに戻ることになるだろう。

それから、どうなるのか? この疑問は既視感に満ちている。

2012年後半に安倍氏率いる自民党が政権与党に復帰した当時も、経済学者たちがこの疑問を口にしていた。この疑問がふたたび浮上したいま、成長の鈍化や消費者物価の低迷、そして世界が着々と中国に引き寄せられていく状態を傍観している企業に対して、日本政府が使える武器は、以前よりもはるかに少なくなっている。


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思い出してほしい。2020年、安倍政権はパンデミックで疲弊した経済に、GDPの40%にあたる2兆ドル(約230兆円)を投じた。いっぽう、日本銀行はすでに、ずいぶん前から債券市場と株式市場を買い占めていた。2018年までに、日銀のバランスシートは、日本全体の経済規模に匹敵する5兆ドル(約550兆円)を上回っていた。

確かに、日本政府はもっと多くの景気刺激策を経済に注ぎこめたはずだ。日銀は資産購入を拡大し、脆弱なセクターを支援できただろう。だが、この8年の教訓は、はっきりしている。日本にはこれ以上の公的資金は必要ない──必要なのは、その使い道だ。それはつまり、今後の8年は過去8年よりも良くなるという信頼を、消費者と企業に与えることを意味する。

だが今や、五輪後にコロナ感染者数が急速に拡大したことにより、今後8年どころか、今後8週間の最善のシナリオさえもが引っくり返されようとしている。

「短期経済見通しの厳しさを考えると、需要は今後も制約されるだろう」とムーディーズ・アナリティックスのStefan Angrickは述べている。「新規感染者数が最多を更新したことにより、政府は緊急事態宣言の延長を決定した。したがって、短期的には労働市場と消費の低迷が続くだろう。さらに、インフレ見通しが抑制されている状況に加えて、賃金上昇も期待外れであることから、金融政策は引き続き維持されると予想される」

つまり、米国から韓国にいたるまでの中央銀行が、危急時救済策の「段階的縮小」を口にしている一方で、日本の当局は、恒久的な経済刺激モードから抜け出せないということだ。そして、開催前に政治家たちがあてにしていた五輪による好景気が幻と消えたいま、実際のところ日本にふさわしいものは「機会の損失」における金メダルと言えるだろう。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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