世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

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今年、米フォーブス誌の「The Midas List」に日本人として初めて名を連ねた中村幸一郎。彼がシリコンバレーで見つけた、未来を見通すための唯一の近道とは。


「VCは全然セクシーなビジネスじゃない。地道なマニュファクチャービジネスだと、やっとわかった」

シリコンバレーでSozoベンチャーズを立ち上げて2年目。中村幸一郎はこれまで考えていたことを言葉にして、共同創業者のフィル・ウィックハムにぶつけた。フィルは、中村が学んだカウフマン・フェローズ・プログラム(ベンチャーキャピタリストの
次世代リーダー育成機関。以下KFP)で代表を務めていたベンチャーキャピタリスト。中村のVC観を聞いて、フィルは「その通り!」と手をたたいた。

VCの世界はいっけんセクシーに映る。起業家はビジョンや世界観を熱く語り、それに共感したベンチャーキャピタリストが直感に従って投資を決定。その出会いが世界に変革をもたらし、結果として巨万の富がついてくる―。シリコンバレーには、そうした心躍るストーリーが数多く転がっていると想像している人は多いはずだ。

しかし、中村が見たシリコンバレーは違った。

「そんなやり方で成功しているベンチャーキャピタリストは誰もいなかった。成功しているキャピタリストと共同出資するようになって、この仕事はむしろ華やかさと対極にあるとわかりました」

中村は、ベンチャーキャピタリストを「ジャーナリストに近い職業」と評する。

「ジャーナリストは、まず情報収集をして、その情報が正しいかどうかファクトチェックしてから記事を書きます。プロセスはベンチャーキャピタリストも同じ。魅力的なプレゼンがあってもうのみにしないで、関係者にインタビューを重ねてチェックする。地道な作業の先に投資判断があります。ある方の受け売りですが、本当にそうだと思います」

実際、VCの本質をつかんだ中村は、自分の信じたやり方で着実に実績を積み上げていく。Sozoベンチャーズのポートフォリオには、パランティア、ツイッター、スクエア、ズームなどメガベンチャーに育った企業がズラリ。中村自身も、米フォーブス誌「The Midas List(最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング)」2021年版で72位に入った。日本人として初めてのランクインだ。

いまでは著名な投資家と肩を並べる中村だが、もともとはテーブルの反対側、つまり投資する側ではなく投資される側にいた。大学在学中に孫泰蔵と知り合って、Yahoo! JAPANの立ち上げに参加。インターネットビジネスの起業家第一世代だ。

実は当時から、日本におけるベンチャー投資家の振る舞いには違和感を覚えていた。

(この続きは、Forbes JAPAN10月号でお読みいただけます)



なかむら・こういちろう◎Sozoベンチャーズ・マネージングディレクター。早稲田大学在学中にYahoo! JAPANの立ち上げに参画。三菱商事を経てシカゴ大学MBA修了。2012年、カウフマン・フェローズ・プログラムを修了後、Sozo ベンチャーズを共同創業。米フォーブス誌「The Midas List」2021版では72位。

文=村上 敬

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