ゴルフの会場でも、不完全燃焼となった新技術がある。
私がNTTドコモ在籍時代から、5G活用の新しい観戦スタイルを届けるに親和性が高いスポーツはゴルフだと主張して来た。実際に観戦のためゴルフ場を訪れた経験のある方々はご存知の通り、18ホールもあるコースでも、自身が観戦できるのは、ごく一部。
特定のホールに張り付き、いろいろな選手のプレーをそこだけで楽しむか、もしくはひと組の選手たちに帯同し、その数名の選手のプレーを目撃するか。どちらに転んでも観戦している場所以外の選手のプレーや戦績など全容を目にすることはできない。
ゆえにゴルフ記者などはコースを回らず、すべての映像やコースごとのデータがLIVEで届けられるプレス・ルームに引きこもり、そこでプレーの全容を原稿に起こして行くという作業がこれまでメインだった。
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今回の五輪では、このプレスルームのみに届けられていた映像やデータを、5G通信網を介すことで、観客のスマホやタブレットに届け、コース上にいながら、ハイライトシーンを見逃すことのないソリューションを提供してみせた。
しかし、もちろんゴルフも無観客で実施され、実際に目にすることができたのはごく一部の関係者のみとなった。
こうした革新的技術にチャレンジしながらも、この応援に参加できたのは限られた関係者のみ。本来であれば、現地に足を運ぶことの叶わない家族や親族、または同僚などがこの5G通信網を介し、札幌の沿道に大声援を届けることができたはずが、それが叶わず残念でならない。
NTTとしても、知恵を絞り具現化したソリューションをお披露目する場が立ち消えになり、悔しい思いの関係者も多いことだろう。
もっとも、こうした技術的挑戦が行われながら、取材許可が全く下りず、実物を観ることすら叶わなかった、私のようのプレス側も残念でならないが……。
その中でも五輪の光明と言えるのは、今回実施された各会場は、こうしたソリューションを実現するために5G通信網が完備されたことと、広範囲に接続可能なWi-Fiさえ敷設された点。今後五輪を実施する際に、高速通信網を生かした新たな観戦体制を実現できるインフラが出来上がったカタチだ。
新型コロナ雲散の暁には、革新的テクノロジーを駆使した「新体感」と呼ばれた新しい観戦スタイルを、各会場で堪能できる……今はそう信じ、今しばらく引きこもり、我慢することにしよう。