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Forbes JAPAN Web編集部


「林業」を知らない子どもたち


彼らの活動は、QINOSODAの開発だけにはとどまらない。

並行して取り組んでいるのが、地元の子どもたちをターゲットにした「木育」だ。「少子高齢化が進む白山市では、“森を守る”林業の担い手の減少も大きな課題です。ですが、これまで義務教育で林業に触れる機会はありませんでした」(高平)。そこで、未利用木材の利用啓蒙と、地元の自然や生業の魅力を未来へ伝えることを目的とした木育授業「QINO school」を企画した。

6月には白山市立千代野小学校で初の授業を実施。地元の蒸留所、林業、製材所からゲストティーチャーを招き、木を使ったワークショップを行った。「地元の山の魅力を学ぶだけでなく、木を職にするエキスパートたちとコミュニケーションを取りながら、未利用木材を活用したものづくり体験ができる場をつくりました」と高平。

授業の最後には、高平が考案したクロモジの「紙石鹸」も登場。「我々の研究でクロモジには抗菌作用があることが分かり、開発しました。衛生面のケアが大切なコロナ禍で、手の上で泡に変化する“魔法”のような紙石鹸であれば作業になってしまった手洗いが『遊び』に変わるかなと。楽しみながら木育に触れてもらうことができるツールです」。


手の上で泡に変化する、クロモジの「紙石鹸」/fabriq提供

今後「QINO school」は教育委員会を巻き込んで、多くの子どもたちに広めていく計画だ。

「森のレストラン」で関係人口を増やす


山林の問題に臨むためには、「意識する人・関わる人」を増やしていくことも大切だ。

そこで「山や森との“かかわりしろ”が増えるような森づくりを目指す」と高平。山自体をコンテンツと捉え、アイデアや技術、リソースを集約し、人の流れを生み出す「モノや体験」を仕掛けていくという。「”山”という場に人足を増やし山林に経済を生み出すことができれば、行政からの働きかけも期待できる。QINOの活動が観光資源になれれば、白山市の関係人口増にもつながる。そんな好循環を目指しています」。

すでに動いているのが、10月に期間限定でオープン予定の森のレストラン「QINO Restaurant」だ。「”時空を超える循環”をあじわうレストラン」をコンセプトに、石川県出身のフードアーティスト・諏訪綾子との共創で森の中での食体験を提供する。


フードアーティストの諏訪綾子(中央)/fabriq提供

初年度は「山水」をテーマに、7品からなるコースに仕立てる。レシピは、開催後も地元に残り実用されていくように設計したものだ。

この「山水」が生まれた背景について、高平は「水が山・川・海・空を旅して循環し、生まれ変わるという地理学的な考え方は、QINOのミッション『木を使い山を育てる』と深い関係があります。手取川流域全体を含む白山市だからこそ、”水”というモチーフが当事者意識を生み出す記号になると考えました」と話す。このような考えから、企画は山手の上流域から日本海へとつながる下流域までの全流域に住む有志を巻き込んで進めている。

ただ残念なことに、今年は新型コロナウイルスの影響が懸念されるため、完全招待制(無料)のクローズドでの実施にとどめる。1日2回の実施で計40人を招待する予定だ。「今回は我々の活動の様子を発表する場として捉え、今後一緒に活動してくれる仲間を見つける機会にもしたい」と高平。

文=田中友梨 写真=小田光二

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