ビジネス

2021.08.26

テスラが誇る「自前主義」と6つのAIテクノロジーの全貌

テスラ・ボット(c)Tesla


計画と統制


計画と統制(Planning & Controls)チームの責任者であるAshok Elluswamyが次に登壇した。彼は、車両の走行軌跡プランニングの問題を分析的に解決する上で直面している課題をいくつか紹介し、テスラがニューラルネットワークを用いてこれらの課題を乗り越えようとしている状況を説明した。テスラは、コンピュータに囲碁のようなゲームのトレーニングをする上で有効な「モンテカルロ木探索(Monte Carlo tree search)」と呼ばれるアルゴリズムを採用しているという。

ニューラルネットワークにこのアルゴリズムの実行をトレーニングすることで、グラフ探索アルゴリズムに比べてパスの収束が格段に速くなる。Elluswamyは、駐車場の例を用いて、決定的アルゴリズムとニューラルネットワークのパフォーマンスの差を説明した。

データラベリング


多くの企業は、データラベリングをオフショアの安価な業者に外注しているが、テスラは自前で行っている。AI部門のシニア・ディレクターのKarpathyが再び登壇し、同社のデータラベリングチームが米国を拠点にして、ベクトル空間のデータをラベリングする計算ツールを開発していると説明した。

その後、Elluswamyがデータラベリングを自前で行うことで効率性が向上している状況を、実例を挙げて説明した。彼によると、レーダーへの依存をなくすためには1万ものラベリングをした動画が必要で、業者に外注すると数カ月を要することになるが、テスラはインハウスでソフトウェアを使って行い、1週間で作業を完了したという。

シミュレーション


テスラのシミュレーションは、他のソフトウェアプロジェクトと同様に、AIに大きく依存している。同社は、敵対的機械学習を用いてシミュレーターのフォトリアリズムを向上しており、テスラがイベントで見せたサンプル映像は現実の動画とほとんど区別がつかないほどリアルだった。

コンピュータハードウェア


オートパイロットハードウェアのシニア・ディレクターを務めるGanesh Venkataramananは、テスラが世界最速のスーパーコンピュータの開発を目指す「Project Dojo」について説明した。Venkataramananによると、Dojoに用いられているマッチ箱サイズの「D1チップ」には、1テラフロップの計算ユニットが354個組み込まれているという。

テスラは、行列積演算を用いてニューラルネットワーク用に計算ユニットを最適化した。また、チームは、7nmの製造プロセスを用いてD1チップをカスタム設計した。数万個のD1チップをピザ箱サイズに組み合わせた「トレーニングタイル」は、9ペタフロップスの演算能力の演算能力を持つという。そして、タイルを100万個組み合わせたものが、「ExaPOD」と呼ばれる、テスラのデータセンター用スーパーコンピュータだ。

プレゼンテーションの中で、Venkataramananはハードウェアアーキテクチャが既に完成しているようなトーンで説明をしたが、彼は最後に最初のトレーニングタイルが先週到着したばかりであることを明らかにした。つまり、Project Dojoが完成するのはまだ当分先のことになりそうだ。
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編集=上田裕資

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