教室に通わせても逆効果? 親が勘違いしているプログラミング教育

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ここまでの例からもわかるように、プログラミングは、この能力を効率的に身につけ、同時に活用する手段の1つでしかありません。逆に言えば、プログラミング以外の方法で「プログラミング的思考」を身につけさせることも可能なのです。

もちろん、これを理解し「プログラミング的思考」を育む手段として教室に通わせるのはとても有意義なことなのですが、こういった前提や背景を抜きにして、「これからはプログラミングの時代だから」と、お子さんが興味がないのに、やみくもに「プログラミング教室」に通わせても逆効果になることだってありえます。

「プログラミング教室」に通わせることだけが正解ではないのです。20年後、30年後を生きる子どもたちを育てる私たち大人には、こういった事実を知るリテラシーが必要になってくるとも言えるでしょう。

プログラミング的思考は日常生活の中でも学べる


子どもの「プログラミング的思考」を育てるために、プログラミングについてあまり知識のない大人でもできることはたくさんあります。先ほど、「プログラミング的思考」は日常のあらゆるシーンで役立つと述べましたが、逆に言えば、家庭の日常的なシーンで「プログラミング的思考」を育むこともできるのです。

たとえば、お子さんの「どうして鳥は空を飛べるの?」「なんで空は青いの?」といった「なぜ?」「どうして?」をそのまま終わらせるのではなく、子ども自身に仮説を立てさせ、そのあと一緒に調べてみることだけでも、プログラミング的思考を育むことになります。もし忙しいなら、そのような疑問をメモしておき、時間があるときに考えてみてもいいでしょう。

また、料理をしているとき、肉の焼き加減によって食感がどう変わるかを調べてみる。 お好み焼きを作る時の手順を書き出してみる。カルピスの原液を水で薄める際、濃度の違うものを複数作って味を比べてみる。大根をイチョウ切りにする際、どんなふうに包丁を入れれば、最も少ない手順で切ることができるか考える。こんなことも学びになります。

これからの時代を生き抜くために「プログラミング的思考」は大きな武器になります。しかし、学校におけるプログラミング教育はスタートラインに立ったばかりですし、教育の現場もまだ混乱の中にあります。ですから、家庭でのサポートが必須になります。

子どものITリテラシーは「親の関わり方」で決まるといっても過言ではありません。「プログラミングと言われても、よくわからない」という方も、ぜひ最低限でかまいませんので、リテラシーを身につけるためにお子さんと一緒に学んでみてはいかがでしょうか?

『シン・デジタル教育 10年後、わが子がAIに勝つために必要なこと』松林 弘治/著




松林 弘治(まつばやし こうじ)◎ITエンジニア。著述家。IT教育者。1970年生まれ。大学院〜助手時代にユーザインタフェースの理論的な研究を行ったのち、オープンソースの世界に転職。日本発のOS、Vine Linuxの開発に参画、主にPowerPC版の開発を担当し、開発団体の副代表に就任。ヴァインカーブの一員として、大学の全学教育システムの開発・保守を行うなど、各種開発・技術コンサルなどに従事。

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