コロナ禍で海外に出られなくなった現状を太田氏は「ちょうど、日本、長野、自分というものを深く見つめなおす機会になり、とてもよかったと思っている。でなければ、信州食レストランも思いつけなかったかもしれない」と分析する。果たして、来春、どんな店がオープンするのか、楽しみでたまらない。
「世界の名だたるシェフたちと話していると、いつも思うんです。ペルーのガストン・アクリオしかり、クスコで村おこしをしているビルジリオ・マルティネスしかり、廃棄食材で貧困者向けの無料食堂を開いたイタリアのマッシモ・ボットゥーラしかり……。皆、地球規模で社会問題を見据え、自分なりのビジョンを持って、社会的な活動を行っている。だから、そういう視点を持たないと、彼らと話す共通言語がなくなってしまうんです。
日本のシェフは島国ということもあり、どうしても、視野が狭くなりがちです。一所懸命頑張って、美味しいい料理を作って、ミシュランで星をとれても、僕は『で、それで?』となってしまう。だからこそ自分は常に意識を高く持ち、できる範囲で社会的な活動をしていきたいと思っています」
世界をよい方向へ変えていく、少なくともそのベクトルへ向かわせる手伝いをしたいという、太田氏の思いは、ますます大きくなっていくことだろう。
連載:シェフが繋ぐ食の未来
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