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美容ジャーナリスト・齋藤 薫さんが「Marisol」で連載中の美と人生への処方箋。今回は、「負けず嫌いの使い方」について。「自他共に認める負けず嫌い」と言われる水泳の池江璃花子選手が“負けず嫌い”に見えない理由とは?


負けず嫌い......あまり良い響きとは言えない。勝ち気で、柔軟性に欠け、プライドが高く、嫉妬深いといったイメージが、否応なしに沸き上がる。自分で言うならまだしも「あなたは負けず嫌い」と他者に言われるのは、なかなかに複雑だ。

でも一方には、結局のところ“負けず嫌い”なくらいでないと、人間は成功に至らない、事を成し遂げられないという見方も厳然と存在してしまう。

実際、白血病を公表した水泳界のスーパースター、池江璃花子選手が復帰後初の大会各種目で次々に優勝または上位入賞を果たして、驚異的な復活を見せた時、その背景には想像を絶する努力があったことはもちろん、「自他共に認める負けず嫌い」だから成し遂げられた事、というアナウンスもあった。いや並外れて“負けず嫌い”でなければ、命がけの努力などできないはずで、それはそうなのだろう。

でも池江璃花子選手には不思議に“負けず嫌い”の印象がない。まさにタッチの差で勝敗を分けるスポーツの勝者に“負けん気”がないはずがないのに。で、心理学的にはこの“負けず嫌い”、明快な目標を持った時、本当の勝負に挑む時にだけ“瞬発力”のように湧き上がるエネルギーに近いもので、普段はのんびり温厚で、人と競うことが嫌いな人にも、一時的に宿るものと言われるのだ。

それに対し、いつも自分と人を比較し、相手を意識し、敵対心を向けがちな、性分として“負けず嫌い”な人もいる。それこそ普段から何事につけて競争心をむき出しにし、文字通り勝ち気に見えている人に他ならないが、結果として成功や勝利を手にするのは、前者の“瞬発力としての負けず嫌い”を駆使できる人なのだと思う。

“負けず嫌い”を必要な場面でだけ使える人こそ美しい


ちなみに、まだ療養中であった池江選手が他の選手の応援に駆けつけた時のピュアで明るい表情が忘れられない。それもできるし、応援していた相手に勝つこともできる、そのスイッチが見事な人なのだ。だから、この人の“負けず嫌い”はむしろ美しい。そうでなくてもこの人には120%見習うことだらけだが、こうした“負けず嫌い”の使い方こそを学ぶべき。

文=齋藤 薫 撮影=John Chan スタイリスト=郡山雅代(STASH)

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