海が美しいウラジオストクの夏 ロシア式サウナ「バーニャ」も人気

ウラジオストクのマリーナから無人島までは40分ほど


無人島のプライベートビーチに着陸するというコースもある。市内上空からそのままルースキー島やその先の無人島に向かうのだ。島に近づくと、ヘリは下降し、海岸線に沿って切り立った岩場を横目に飛行して、降り立つ。島にいくつかある無人の入江や砂浜を目にしながら。

null
無人島の起伏のある岩場に沿って飛行するヘリからの眺めは絶景

こうしたウラジオストクからの夏の便りを聞くと、ロシア人というのは想像以上にアクティブだと感じた人も多いだろう。なにしろ国土が広く、海外に行かずとも国内旅行するだけで数千キロメートルを移動することになる。そのスケールや距離に対する身体感覚は、日本人とは少し違うのかもしれない。

現在のロシア全体の新型コロナ感染者数は決して少なくはない。現地の統計によると、8月20日の新規感染者数はロシア全土で2万992人だ。しかし、ウラジオストクのあるロシア沿海地方は人口約200万人で、新規感染者数は242人。同じ人口規模の長野県や岐阜県の中間くらいの数である。

感染の推移を見ると、今年5月には20人程度に下がっていたものの、7月になると増え、8月上旬をピークとして若干下がり始めているようだ。

現地在住で「ウラジオ.com」という情報サイトを運営している宮本智さんによれば「日本に比べ、ロシア人の新型コロナウイルスへの対応は基本的にゆるい。飲食店やスーパーに入るときはさすがにマスクをしていますが、戸外でマスクをする人は少ない」と苦笑する。宮本さんは続ける。

「今年の夏、ロシア国内の各地から、多くの人がウラジオストクに来ているようでした。ロシアのビーチリゾートといえば、2014年のオリンピック会場になった黒海のソチが有名です。ウラジオストクはリゾートとはいえない場所ですが、海外旅行がままならない現在、国内で海を見たいというロシア人が多いからでしょう」

ハワイのホテルがいま観光客でにぎわっていると聞くが、海外旅行を断念したアメリカ本土からの客が押し寄せたからだという。同じようなことがウラジオストクでも起きていているようだ。

広い国土、手つかずの自然。人込みで埋まる日本の海水浴場とは違い、ウラジオストクには密を気にせずゆったりと海に親しむことのできる環境があり、うらやましいことこのうえない。

「ぜひ来年の夏こそは出かけるぞ!」と、現地から届いた数々のフォトジェニックなビーチの光景を見ながら、思わず筆者は呟いてしまった。

連載:国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル
過去記事はこちら>>

文=中村正人 写真提供=ウラジーミル・ルセンコ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事