米ワクチン追加接種、パンデミックと闘う世界に「悪影響」との批判も

インドなどの新興国は深刻なワクチン不足に陥っている(Satish Bate/Hindustan Times via Getty Images)

新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」が猛威を振るう状況を受け、米国では9月20日から、すでに新型コロナウイルスのワクチン接種を完了した人の一部を対象に、3回目の接種が開始される。

一方、貧しい国々にはまだ、1回も接種を受けていない人が数多くいる。こうした状況について専門家らは、世界全体のパンデミックとの闘いを困難にするものだと警鐘を鳴らしている。

この3回目の接種、ブースターショット(追加接種)が推奨されるようになったのは、2回目の接種から6〜8カ月後には、ワクチンの効果が弱まるとの調査結果が示されているため。

だが、ブースターショットに関するバイデン米政権の方針は、世界保健機関(WHO)などの考えとは相反するものだ。WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長事務局長は、高いリスクにさらされている世界中の人たちに確実にワクチンを供給できるようにするため、ブースターショットの開始は当面見送るよう求めている。

深刻化するワクチン格差


これまでのところ、ワクチンの供給は著しく不均衡な状態にある。世界人口に占める接種完了者の割合は、約24.5%。2回の接種を受けた人の大半は、裕福な国の居住者だ。

非政府組織(NGO)や慈善団体の多くは、ワクチンの増産が急務だと訴えている。国際NGOオックスファム・インターナショナルは、「世界中の多くの国で、最前線で働く医療従事者でも最初の接種を待つ状況の中、米国で3回目の接種が推奨されることは、…緊急かつ大幅な増産が必要であることを明確に示している」と述べている。

また、米カリフォルニア大学アーバイン校のアンドリュー・ノイマー准教授(疫学)は、世界的に必要とされている量のワクチンを供給するための唯一の方法は、「昼夜を問わずワクチン生産を続けること、より多くの工場を建設し、より多くの人を訓練することだ」と指摘。

「世界全体(の人々)が接種を受けなければ、このパンデミックは猛威を振るい続けるだろう」と警告する。
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編集=木内涼子

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