スマホを「手元に置いておく」だけで打ち合わせが失敗する理由

Getty Images

全世界をくるみ込む最近の環境の厳しさは、社会不安、政治的混乱、世界的なパンデミック、強制隔離、経済の不透明感……例を挙げればきりがない。この最悪の状況が、私たちのネガティブな習慣を加速させている。仕事の生産性やパフォーマンスだけでなく、人生の質をも低下させる悪習慣──それが「マルチタスク」だ。

マルチタスクが私たちの生産性に大きな悪影響を及ぼすことはわかっているのに、スマートフォンなど手持ちサイズのインターネット機器の普及によってそれがますます助長されている。マルチタスクが仕事の生産性にだけ害を及ぼすと思っている人は、それだけでないことに驚くかもしれない。

筆者が好きな言葉を紹介しよう。「いかに多くを達成するかより、一瞬一瞬をいかに充実させるかが重要だ」。

この記事では、マルチタスクがあなたの大切な時間を損なうふたつの例を挙げ、克服するための方法を提案する。気を散らす情報に反応するのはもうやめて、主体的に選択する人生を歩もう。


マルチタスクはなぜ悪い?


テクノロジーはマルチタスクを助長してきた。コンピューターがふたつの作業を同時に処理できるなら、人間だってできる、というわけだ。マルチタスクは私たちのパフォーマンスを向上させるものとして長くありがたがられてきた。職務記述書もこの考え方に一役買っている。マルチタスクはさまざまな職務において、広く求められるスキルのひとつになった。

しかし最近では、マルチタスクが私たちのパフォーマンスばかりか、メンタルヘルスや体の健康にも悪いことがわかってきた。それでもなぜか、複数の作業を一度にこなすほうが生産的だと感じてしまう。この錯覚のせいで、私たちはマルチタスクをなかなかやめられない。


Getty Images

一般的な「マルチタスク」の定義は、ふたつの作業を並行して行うことだ。これについて、もっと詳しく検証してみよう。確かに身体的には、ふたつの作業を同時に行うことは可能だ。たとえば車を運転しながら電話するといったように(これ自体が非常に危険で気がかりな行為だ。自分だけでなく他人にも危害を与えかねない)。

しかし実際、人間の脳は一度にひとつの処理しか実行できない。マルチタスクを行っているように見えても、厳密にはすばやく切り替えながら、ふたつのタスクの間を行ったり来たりしているだけだ。その結果、どちらのタスクも効率が落ちてしまう。

これを読んでいる人の多くは、仕事がオフのときもマルチタスクを続けているかもしれない。マルチタスクが無意識の習慣になっているからだ。体に染みついた癖を「オフにする」のはそう簡単ではない。
次ページ > 「ファビング」が人間関係を壊す

翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事