マルチタスクが私たちの生産性に大きな悪影響を及ぼすことはわかっているのに、スマートフォンなど手持ちサイズのインターネット機器の普及によってそれがますます助長されている。マルチタスクが仕事の生産性にだけ害を及ぼすと思っている人は、それだけでないことに驚くかもしれない。
筆者が好きな言葉を紹介しよう。「いかに多くを達成するかより、一瞬一瞬をいかに充実させるかが重要だ」。
この記事では、マルチタスクがあなたの大切な時間を損なうふたつの例を挙げ、克服するための方法を提案する。気を散らす情報に反応するのはもうやめて、主体的に選択する人生を歩もう。
マルチタスクはなぜ悪い?
テクノロジーはマルチタスクを助長してきた。コンピューターがふたつの作業を同時に処理できるなら、人間だってできる、というわけだ。マルチタスクは私たちのパフォーマンスを向上させるものとして長くありがたがられてきた。職務記述書もこの考え方に一役買っている。マルチタスクはさまざまな職務において、広く求められるスキルのひとつになった。
しかし最近では、マルチタスクが私たちのパフォーマンスばかりか、メンタルヘルスや体の健康にも悪いことがわかってきた。それでもなぜか、複数の作業を一度にこなすほうが生産的だと感じてしまう。この錯覚のせいで、私たちはマルチタスクをなかなかやめられない。
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一般的な「マルチタスク」の定義は、ふたつの作業を並行して行うことだ。これについて、もっと詳しく検証してみよう。確かに身体的には、ふたつの作業を同時に行うことは可能だ。たとえば車を運転しながら電話するといったように(これ自体が非常に危険で気がかりな行為だ。自分だけでなく他人にも危害を与えかねない)。
しかし実際、人間の脳は一度にひとつの処理しか実行できない。マルチタスクを行っているように見えても、厳密にはすばやく切り替えながら、ふたつのタスクの間を行ったり来たりしているだけだ。その結果、どちらのタスクも効率が落ちてしまう。
これを読んでいる人の多くは、仕事がオフのときもマルチタスクを続けているかもしれない。マルチタスクが無意識の習慣になっているからだ。体に染みついた癖を「オフにする」のはそう簡単ではない。