ザ・リアルリアルの種が植えられたのは、ワインライトの人生の初期だった。彼女の親はともにアーティストで、「アップサイクリング」を信奉し、衣類や室内装飾品をごみ箱から救出していた。
「彼らは美しいものが大好きでした。そして、それは必ずしも“美しい新品”という意味ではありませんでした」とワインライトは言う。「母はよく、誰かの家へ行っては、たとえば素敵なラグなんかがあると、『売りたくなったら、私が買うから』と言っていました」
その生い立ちと、サンフランシスコ周辺の高級ブティックの「委託品」セクションで列をつくる客を眺めてきた経験から生まれたのが、ザ・リアルリアルの発想だった。2011年の起業当初は、マリン郡の自宅で仕事をやりくりしていたが、2年後に事業を拡大し、サウサリートの倉庫に場を移した。
フォーブスの推計によれば、2015年までにザ・リアルリアルの価値は3億ドルに達し、ペッツ・ドット・コムの最盛期を上まわった。2019年には株式を公開し、現在の時価総額は10億ドルをはるかに超えている。
2019年、パーソンズ美術大学がファッション界に貢献した人を称える「Parsons Benefit」に選ばれた(Getty Images)
コロナの打撃を受け、「今年は移行の年」
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、起業家としてのワインライトに新たな難題の波をもたらした。2020年3月に政府の外出禁止令により企業活動が止まったあと、彼女は1000人を超える従業員の一時解雇に追いこまれ、委託者から預かった商品が、カリフォルニア州ブリスベンの自社倉庫で山積みになるのを眺めていなければならなかった。その間、売上は急落した。
「当社の事業は、パンデミック以前は40%の成長を続けていました」とワインライト。ザ・リアルリアルの流通取引総額(GMV)は2019年に42%増の10億ドルに達していた。
「40%増だったものが45%減になり、瞬く間に85%も揺れ動いたんです。しかも、いつになったら回復するのか、確かな見通しはありませんでした」
その回復は、いまも進行中だ。5月に発表された2021年第1四半期の決算報告では、売上は前年同期比27%増のほぼ1億ドルに達したものの、5600万ドルの純損失を計上した。いまの目標は、自社を成長の軌道に戻すことだが、一日一日を着実に進めていくつもりだ。「今年は移行の年です」と彼女は述べる。
そして、ワインライトが自身のキャリアで学んだことをひとつだけ挙げるなら、それは「最高の成功は、時として挫折のあとに生まれる」ということだろう。