ビジネス

2021.08.27

「Creator's Coin」は真の民主的なソーシャルメディアになり得るか

Hermann Mueller / Getty Images


Owyang氏は、これからはRallyを筆頭にその他の新興勢力を含む競合を含む市場の拡大を予想しており、それに伴って既存の大手プラットフォームや新興勢力がCreator’s Coinの真似をし始めるであろうと言う。

「かつては大手企業に力が集中しており、それを分散する流れとしてシェアリングエコノミーの概念が生まれました。しかし、その発達とともにプラットフォーム側も巨大化。例えばYouTubeのように、動画の配信を自由にしたはずものが、コントロールする力を持つようになりました。今後は、そのコントロールを回避し、再び個人が力を持てるようにする仕組みとして、Creator’s Coinが利用されていくでしょう」

もちろん、こうした新しい仕組みが定着していく過程で、必ず悪知恵を働かす勢力も現れてくるはずだ。Owyang氏は「新しいものが生まれるとき必ず反作用が働くのが世の常」と、次のように指摘する。

「今後、例えば既存の大手プラットフォームが新興勢力を脅威と見なして何らかのロビー活動を展開し始めるかもしれません。彼らは規制側当局を味方につけることもできます。また、国と地域によっては独自の規制があります。利用の制限や、そもそも使用が認められない市場圏も出てくるでしょう」



ただOwyang氏は、冒頭述べたように、Creator’s Coinはポストコロナ禍での新たなマネタイズのプラットフォームとしての実物経済での利用を目的とするものであり、より「民主的なソーシャルメディアの形・仕組み」として整備されていくことに大きな意義があると考えている。

「大切なことは、Creator’s Coinというが決して投機目的ではなく、あくまで実物経済における交換手段としての利用用途を想定しているという点です。様々なデータが示す通り、この1年間でCreator’s Economyが急加速していることは肌でも感じることができます。既存の“プラットフォーム依存”からクリエーターは開放されたいのです。彼らはコミュニティ形成を主体的に構築しながらマネタイズもできる『より民主的な』手段を得たいと考えており、そのひとつの手段としてCreator’s Coinが伸びていくでしょう」

Rallyのコミュニティサイトによると、同社は今年度から、アジアを皮切りに世界展開を始めていく意向だ。中でも、金融市場が成熟し、法整備もしっかりとした日本を具体的な開拓地域として掲げている。

またOwyang氏が言うように、近年日本の大手都市銀行も地銀も仮想通貨市場の普及に備えたITインフラの整備とサービスモデルの構築に予算を充てているようであり、Rallyに限らず、日本国内からもユーザー側に権限委譲を果たし得るものが生まれてくる機運は高い。


Jeremiah Owyang◎米国サンフランシスコ市に本拠を置くリサーチ及び戦略アドバイザリー・ファームKaleido Insightsの共同創業者。主に未来のデジタル・テクノロジーに関する予見者としてシリコンバレーのビジネス界で高い評価を得ている。主なクライアント企業にAdobe、Cisco、Nestle、Johnson & Johnson、Visa、Wells Fargo等。またTED Talkでの数多くの基調講演を始め、Wall Street Journalやニューヨークタイムズ、テック系の有力メディアの一つである米Fast Company等にコラム等も多数寄稿。

文=熊谷伸栄

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