ACSL|日本のドローン大国化へ向け準備は整った
ドローン研究の第一人者、千葉大学名誉教授・野波健蔵が、アカデミア発ベンチャーとして設立したACSL。自社で制御ソフトウェアを開発する優位性もあり、世界でも高い評価を受けてきた。
「世界と戦える技術を創業当初から備えていました。ただそれをビジネスとしていかにグロースさせるかが次の課題でした」
そう語るのは、34歳までアカデミアの世界で過ごし、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーでビジネスの腕を磨き、ACSLにCOO/代表取締役として参画した太田裕朗(現・取締役会長)だ。経営支援策としてUTECが紹介した人物である。
太田はアカデミアの経験を生かして技術者と対話しつつ、資本政策や事業計画の策定、経営人材の補強など、ビジネス面での体制強化を粛々と断行していった。
「いまでは弊社のドローンは、国内最大インフラを手がけるまでに成長しました。日本郵便および日本郵政キャピタルと資本・業務提携し郵便のDXを行っているのです。自律型ドローンによる自動配送などで、コスト減だけでなく慢性的な人材不足の解消を目指しています」
さらに同社は経済産業省/産業技術総合開発機構による「安全安心なドローン基盤技術開発」にも参画している。利益を生む企業体質は達成した。ここからは産業づくりの段階だという。
「そのためには、ドローン産業における日本のプレゼンスを高めなければなりません。ACSLが次のステージへ進むために、私は最適な人材・鷲谷聡之(現代表取締役社長)にバトンを渡したのです」
太田 裕朗(おおた・ひろあき)◎京都大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻/助教を経て、カリフォルニア大学にて研究に従事。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2016年7月ACSLのCOOに就任。代表取締役を経て、現在は取締役会長。
Green Earth Institute|バイオリファイナリーの独自技術で世界を席巻する
再生可能資源(バイオマス)を原料に、さまざまな燃料や化学品を生産する技術として近年注目を集めているバイオリファイナリー。その最先端の技術を駆使して、地球温暖化の防止や循環型社会の実現を目指しているのがGreen Earth Institute(GEI)だ。かじ取り役を務めるのは代表取締役(CEO)の伊原智人。2011~12年に内閣官房の国家戦略室でグリーンエネルギーの成長戦略を書いた人物である。
「市場に限界のある国内よりも、最初からグローバル市場を目指すべきだと指摘しました。書いたからには実践したい。そんな気持ちがGEI参画の原動力になりました」
当初は石油の代替燃料として期待されたバイオエタノール市場に挑戦したが、石油価格の下落とともにビジネス化は困難に。窮地を救ったのは、家畜飼料に添加するアミノ酸生産への路線変更だった。
「遺伝子操作で微生物を設計し、バイオマスを原料に有用な化学品をつくり出す技術を駆使し、そのライセンスを販売するのがGEIのビジネスモデルです。生み出すものを燃料から、アミノ酸にシフトするのは難しいことではありませんでした」
化学品のライセンス事業は、創薬ベンチャーと製薬会社の関係に近い。残念ながら国内ではまだビジネスにならないが、米国ではザイマージェン(Zymergen)、ギンコ・バイオワークス(GinkgoBioworks)といったユニコーン企業がひしめく巨大市場が存在する。
「自社の強みを追求し、当初からグローバルに目を向けていたからこそ、たどり着けたビジネスモデルだと思います」
GEIの可能性を確信していたUTECが、2011年に2号ファンドから設立出資したことでビジネス化への取り組みは始まった。潮目が変わったのは、中国アミノ酸メーカーへの技術提供が軌道に乗り始めたころだった。同社の製品の中国市場シェアが50%にまで引き上がり、GEIの業績にも弾みがついたのだ。
「コーヒーかすや農業ごみなどの非可食物を原料にすれば、SDGsにもつながります。そうした社会貢献が核にある事業こそ、GEIメンバーが望んでいるものです」
伊原智人(いはら・ともひと)◎東京大学卒。1990年に通商産業省(現・経済産業省)に入省。リクルートを経て、2011年より内閣官房の国家戦略室でエネルギー政策を担当。2013年、Green Earth Institute代表取締役(CEO)に就任
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