しかし、ようやく最近になり、コロナ禍の自省の中で、大企業を中心にSDGsへの対応が急加速している。スロースターターだった日本だが、一度点火すれば早いのも特性だ。
そこで本稿では、日本が出遅れてしまった理由を分析しながら、ぜひ知っておいていただきたい、SDGsの重要な「2つの側面」に迫りたい。
SDGsはなぜ“スルー”されるのか
SDGsは突き詰めると文明論ではないかと感じる。SDGsの取り組み方も国の文明によって異なる。例えば、SDGs先進国であるスウェーデンのグレタ・トゥーンベリへの反応などにもお国柄が表れる。また、ミレニアル世代とか、それより若いポストミレニアル世代のほうが、SDGsに高い関心を寄せる比率が非常に高い。
その点、日本には、「三方良し」(自分良し・相手良し・世間良し)という商習慣や「和の精神」があり、SDGsの目標17「パートナーシップ」は根付いている。SDGsを加速させるポテンシャルは極めて高い。
ところが、昔から根付いていることがかえって「くせ者」にもなっている。「わざわざ外来のSDGsなどいらない」との議論になりやすいのだ。ここが運命の分かれ目になる。
SDGsに対する間違った思い込みでSDGsを「スルー」してしまう人がいる。筆者はこれを「SDGsスルー」と呼んでいる。「三方良し」をベースにするのはよいが、今のところ世界には通用しない。
滋賀県彦根市にある「三方よし研究所」に行った際、三方よしの古文書などの展示と並んで、同様に心得とされる「陰徳善事」という言葉に目が留まった。「あ、このせいだ」と思った。
これは、「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」という意味である。日本人の美徳であるが、日本企業を内弁慶的にしているのはこの考えの影響であろう。この内向き志向のメンタリティーが日本企業の島国内過当競争により起こりやすい「ガラパゴス化」の一因でもあるのだ。
今は、世代の違いで「わかる人にはわかる」といった空気を読む方法は通じない。ましてやグローバルには通用しない。世界の競合企業がうまく発信している中ではとても戦えない。それに、発信しないと同じ志を持った仲間が増えない。仲間内だけではイノベーションも起こりにくい。