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2021.08.22

SDGsで日本が出遅れたのはなぜ? 知っておきたい2つの側面

SDGs、日本はなぜ出遅れた? / Getty Images


終わらない「解読作業」


日本では現在でもSDGsの「解読作業」が盛んに行なわれている。SDGsの認知度向上にはよいことであるが、いつまでも本質をとらえずに字面だけで暗記型の解読作業をしていると、「SDGsのガラパゴス化」につながりかねない。

人権・気候変動・労働慣行・調達など刻々と深まる世界課題の認識がないと、ビジネス・リスクに見舞われる。解読を終えて早急にこの共通言語を“使いこなす”べきだ。

では、日本企業はどうすべきか。筆者はこれまでに、農林水産省・環境省・外務省での行政や、伊藤園の取締役などを経験、現在は千葉商科大学で教授を務めており、たまたま産官学を渡り歩いてきた。その経験の中で編み出した“SDGs活用法”が、日本企業になじみの深い「三方よし」を補正して、「発信性」を加える方法だ。



「三方良し」は日本のビジネス界で広く知られているので、この言葉を使えばストンと腹に落ちる。そのため筆者は、日本企業におけるSDGs推進の解決策として「発信型三方良し」を提唱し理論化してきた。「三方良し」のひとつである「世間良し」がSDGsだと考えればよいのである。そして発信力の強化には、世界共通言語であるSDGsが役立つ。

これが現代版「三方良し」ビジネスだ。CSRだ、CSVだ、ESGだ、といっても借り物の概念になりがちである。より多くの日本人の腹に落ちる形で、自分事化していくことが必要だと思う。

側面1. SDGsは世界を読み解く「羅針盤」


さて、本題に入ろう。昨今、新型コロナによるパンデミックで社会が激しく変化し、未来に向けた「グレート・リセット」(大変革)とパンデミックからの「より良き回復」が求められている。このうねりの中で、あらゆる人や企業は新たなサバイバル競争のフェーズに入ったといえるであろう。

この混迷の時代に世界を読み解く「羅針盤」が欲しいところだ。それこそがSDGsの重要な側面のひとつである。

SDGsは、持続可能な社会づくりに関する様々なルールの集大成。先進国も途上国も、政府も企業も関係者もすべてが関わり、自主的に取り組む2030年に向けた目標である。要するに、地球規模の課題を考え、「持続可能な未来の発展」について語るための世界の共通言語であり、世界に通用する「羅針盤」なのだ。



例えば、今回のパンデミックは、SDGsでどのように解釈できるであろうか。17の目標から構成されるSDGsの目標3は「健康」であり、その目標のターゲットのひとつに「感染症への対処」がある。そして目標17には「パートナーシップ」が明記されている。このことから、パンデミックからの「より良き回復」に向けては、3番・17番を軸としながら、ほかの目標と関連させて総合的に思考することが必要だと解釈できる。

また、新型コロナの影響で自治体の役割もクローズアップされている。これは目標11の「住み続けられるまち」が羅針盤になる。コロナ禍では、国はもちろん、市町村の対応が市民から高い関心を集めるようになった。我々は、やはりローカルの一員であると改めて気づいたのである。
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文=笹谷秀光

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