少なくとも米国では、常に革新的な手段を模索し、業務効率化とコスト削減を追求し続けている。そのアマゾンが今年、新たな配送システムの特許を申請していたことが明らかになった。拠点となる配達バンから注文主の玄関先まで、小型の宅配ロボットが荷物を運んで届けるシステムだ。
この特許が実現すれば、新たなテクノロジーが世界にもたらされると同時に、通販市場を牽引するアマゾンの地位はいよいよ不動のものとなる。
無人バンからドローンまで、宅配業界の試行錯誤
アマゾンをはじめ世界中の宅配サービスが、消費者に荷物を届けるためのよりよい方法を求めて、ここ何年も試行錯誤を続けている。自動運転の配達バンから、空中を飛んで個人宅に直接荷物を届けるドローンまで、ありとあらゆる新技術が試されてきた。ロボットは総じて安上がりな輸送手段だと考えられているからだ。
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しかし、今回のアマゾンの戦略は少し違う。配達員がバンを二重駐車して届け先を一軒一軒足でまわる代わりに、バンに搭載された小型の自走式車両が個別の玄関先まで配達する仕組みだ。
「有人運転+宅配ロボット」の新戦略
この新しいシステムでは、アマゾンのバンを運転するのは人間だが、その先の配達作業は自動走行車両(ロボット)によって行われる。
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たとえば次のような具合だ。アマゾンのバンが荷物を載せて配送先の家の前に到着すると、車に搭載されたシステムが建物をスキャンし、自走式ロボットのための経路を見つけ出す。それからバンのバックドアが開いて昇降用スロープが降ろされ、ロボットが玄関に向かって走り出す。そのあいだに必要な更新はバンから行われる。
ロボット車両には、バンにデータを送信するためのナビゲーション技術やカメラが搭載されている。何か不都合があった場合も(庭で犬がさかんに吠えているなど)、ロボットがバンに報告する。
amazon─「Amazon Scout」より
届け先への配達が完了すると、バンはロボットが無事に戻ったことを確認し、次の配達を開始する。以上が全体の流れだが、アマゾンがこのシステムを独自に構築するのかどうかはまだわからない。バンの上からドローンを飛ばすか、ドローンが目標地点に(弾道ミサイルが弾頭を落とすように)荷物を落としてからバンに戻るといった、これまでの特許を修正する可能性もある。想像すればきりがない。
アマゾンに限らず、ネット通販の大手はこぞって無人配送システムの開発にかける予算を増やし、競争力を維持しようとしている。
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無人化への期待と懸念
米国の小売最大手ウォルマートは昨年、ゼネラルモーターズ(GM)と提携し、自動運転車による配送サービスをアリゾナ州で試験的に開始すると発表した。GMの子会社クルーズが開発した自動運転車を使って非接触配達を行い、最終的には「完全無人宅配」を目指す。
世界的なパンデミック下でのこうした市場の動きは、ネットショッピングの利用者にとっては耳寄りな話だろう。しかし同時に、AIや無人配送技術の利用が広がることで、全国の配達員やトラック運転手があおりを食い、多くの失業者が発生することも予見される。
(本記事は、英国のエンジニアたちが立ち上げたテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」からの翻訳転載です)