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2021.08.24 07:00

戦いは、フェイスブックから暗号通貨へ。帰ってきた「ザッカーバーグの敵」

Alli Harvey/Getty Images for Spotify

世間では、映画『ソーシャル・ネットワーク』に登場したザッカーバーグに出し抜かれる双子のイメージがいまもあるが、早くから暗号通貨に着目してきたウィンクルボス兄弟はこの先、“ビッグテック”の立ち位置を危うくする存在になるかもしれない。


一卵性双生児のキャメロン・ウィンクルボスとタイラー・ウィンクルボスのオフィスがあるのは、マンハッタンのフラットアイロン地区にあるビルの17階だ。2人が身に着けた高級ストリートブランドのスウェットシャツには、米航空宇宙局(NASA)のロゴ。創業7年になるウィンクルボス兄弟の暗号通貨取引所の商標「ジェミナイ(GEMINI)」が、宇宙探査に由来しているからだ。

ジェミナイ(ジェミニ)とは「双子座」のことで、NASAによる2度目の有人宇宙探査計画の名称でもある。人類を初めて月面に着陸させたアポロ11号の一つ前の計画だ。

「社員のことは宇宙飛行士と呼んでいるんです」そうキャメロンが言う。

「僕らはみんな宇宙飛行士で、貨幣やアート、金融のフロンティアで事業を築いています」

タイラーも同意する。

「宇宙船に乗り込んで、新たなフロンティアを探査している感覚なんです」

青空が広がる3月のある日、彼らの宇宙船はワープスピードで航行していた。2人が投資するビットコインが、2012年の8ドルから史上最高値となる5万8000ドル(約630万円)に達しようとしていた。2人の合計純資産額は60億ドルに急増。最新の投資先で急成長中のビットコイン融資大手「ブロックファイ」は3億5000万ドルを調達し、企業価値は30億ドルになっていた。

兄弟が出資するなかで最も勢いのあるベンチャー事業でデジタルアートのオークションプラットフォーム「ニフティ・ゲートウェイ」も、取り扱い作品がクリスティーズで競売にかけられるという輝かしい栄光を享受していた。255年の歴史をもつこのオークションハウスの歴史上初めて、「非代替性トークン(NFT)」のアート作品が落札されようとしていたのだ。

世界の大半はいまもこの身長約195cmの双子の兄弟に、フェイスブックを題材にした映画『ソーシャル・ネットワーク』に登場したボート選手のイメージを抱いている。ハーバード大学でクラスメートだったマーク・ザッカーバーグは、2人のソーシャルネットワーキングサイトのアイデアを盗み、世界に28億人のユーザーを擁する一大帝国と、970億ドルに上る個人資産を築き上げた。

ウィンクルボス兄弟が合わせて6500万ドルのフェイスブック株および現金と引き換えに、ザッカーバーグと和解してから十数年。「ウィンクルバイ」という呼び名でも知られる2人は、いまやあるテクノロジー運動のリーダーとして頭角を現している。運動の核となる活動の理念は、世界中のすべての資産の記録をデジタル化し、管理を分散化させ、ゲートキーパー(門番)を取り除くこと。ゲートキーパーにはフェイスブックも含まれる。
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文=マイケル・デル・カスティージョ / スーザン・アダムズ / アントワーヌ・ガラ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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