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2021.08.24

戦いは、フェイスブックから暗号通貨へ。帰ってきた「ザッカーバーグの敵」

Alli Harvey/Getty Images for Spotify


今年6月、プロトコル・ラボスは分散型のアマゾンやグーグル、フェイスブックをつくるワークショップを開催する。ユーザーの個人情報に的を絞った広告からの収益に頼るのではなく、ファイルコインのトークンで報酬を得られる仕組みにしようというのだ。いずれは、ファイルコインでつながったコンピュータが、こうした巨大テック企業のクラウドサービスと競合するようになるかもしれない。

サンフランシスコのオアシス・ラボスも、ウィンクルバイが所有する有望なスタートアップだ。セキュリティと人工知能(AI)が専門のカリフォルニア大学バークレー校の教授が運営する同社は、個人のゲノム情報といった超機密データに特化している。ユーザーが自分のデータを管理し、企業がそれを利用する場合は報酬を受け取るというコンセプトだ。

ウィンクルボス・キャピタルのポートフォリオに名を連ねる「スタックス」も、“ビッグテック”による集中管理に真っ向から挑もうとする複数のプロジェクトをサポートしている。例えば「ブーム」は分散型のウォレットで、「プラビカ」はメール、チャット、ビデオ通話の機能を一元化する分散型の通信プラットフォーム。「シグル」は分散型ワードプレスで、ウェブサイト制作用のアプリケーションだ。

ウィンクルボスの双子のいちばん新しい投資先は、ビデオゲームをつくる「アーティ」だ。アーティのゲームはダウンロードする必要がなく、ゲーム内のデジタル資産はエクスポートして公開市場で売買したり、競合のゲームにインポートしたりできる。イーサリアムのブロックチェーン上で発行された資産を使用していて、どこからでもストリーム配信できる。ユーチューブの動画がどのウェブサイトでも再生できるようになっているのと似ている。

ビリオネアで、ソーシャルゲーム会社ジンガの創業者兼CEOであるマーク・ピンカスやユーチューブの共同創業者であるチャド・ハーリーも、アーティの出資者だ。同社の共同創業者であるアルマンド・カーウィンは言う。

「消費者は1社による独占状態を望んでいません。自由で開かれたウェブに戻りたいのです。そしてそれが、私たちに残された最後の聖域なのです」

分散型のメタバースを本格的に構築しようとする取り組みは、必然的に皮肉な事態も招く。主たる設計者は最終的に必要とされなくなるのだ。

「分散化は境のない連続した現象であるべきです」

キャメロンは窓からニューヨークのクライスラービルを眺めながら言う。

「僕らは、ゲートキーパーにならないことを目指してきたんです」

ブロックチェーン革命はまだ黎明期にある。マーク・ザッカーバーグはご注意あれ。


ジェミナイ◎ウィンクルボス兄弟が2014年に設立した暗号通貨取引所。「イーサ」「Zキャッシュ」「マナ」をはじめ33の暗号通貨の取引と保管を扱う。傘下には、デジタルアート取引の「ニフティ・ゲートウェイ」、分散型コンピュータストレージ「ファイルコイン」の「プロトコル・ラボス」など。

文=マイケル・デル・カスティージョ / スーザン・アダムズ / アントワーヌ・ガラ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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