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2021.08.22

課題を課題化する。「〇〇問題」というネーミングの効用

イラストレーション=尾黒ケンジ


こうした課題ひとつひとつに名前をつけて、日本NPOセンターには現在100以上の課題が集まっています。課題ラボの特にユニークな点は、日本全国のNPOから集まる課題にコピーライターが「〇〇問題」とネーミングしていることです。

名前のついていない課題は存在していないものと同義。なので、課題化するためにまず名前をつけること。すると存在が認められ、問題意識を共有することができます。それ以上に強力な効能は「〇〇問題と聞くと、人はつい解きたくなってしまう」ことです。そして、解きたくなるのがひとりじゃないからこそ、課題の周りには自然と仲間が集まります。それは世界がよりよい方向へと転がる最小単位のチームかもしれません。

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課題ラボの実施風景。毎回100人以上の方にお越しいただきます。

最近では、課題をテーマごとではなく地域ごとに集めてみたらどうなるか? の実験として、島根県・津和野町で地域版・課題ラボを実施しました。現地の地域プレイヤーの方々と協力しながら集めた町の課題30個に「〇〇問題」と名づけるだけでなく、それをカード化することで、現在小中学校の教育現場でご活用いただいています。

さらに課題ラボでの取り組みがキッカケとなり、FoundingBaseという団体が主体となって、町の課題を解く人たちが集まるコワーキング&コミュニティスペース「まちのオフィス」が生まれました。どこまで活動の輪が広がるのか、私自身も楽しみにしています。

身近な課題はみんなのもの


私たちの社会、果たしてこれでいいんだっけ。新型コロナによって立ち止まらざるをえなくなったこの機会に、自分にとって切実な課題を見つけて名前をつけてみる。するときっと、どうすれば解けるかよく学ぶ。動く。考える。それは人生において、大切なことにかかわる時間が増えていくことでもあります。

そしてその小さくても偉大な課題は、あなたをひとりにしません。集まってきた仲間と一緒に「いっせいのせ」で動きだしたなら、私たちの世界はきっと面白いことになるはずです。

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津和野版・課題ラボでつくった課題カード。確かに名産品に頼りがち。

冒頭で取り上げた「桜はみんなで楽しむものなのに問題」では現在、地元小学校と協力して、学校と地域の桜を守る授業やクラブ活動を子どもたちと一緒に行っています。みんなで植えた桜で森をつくって、子どもたちが将来また戻ってきたくなるような観光地にすることが私のひそかな夢です。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。


鈴木雄飛◎電通所属、クリエーティブ・プランナー。生活者・企業・世の中が三方よしのコミュニケーション設計を得意とする。デジタルハリウッド大学の助教授を務め、内省と課題解決にまつわるゼミを主宰。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=鈴木雄飛 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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