そうした中、パンデミックの中で接種が進められている米ファイザー製のワクチンが有効であることを明確に示したといえる研究結果が、査読付きジャーナル、イミュニティ(Immunity)に掲載された。
米セントルイス・ワシントン大学医学部の研究チームが8月16日に発表した論文によると、デルタ株が優勢になる中でも、ファイザー製のワクチンによって産生された13種類の抗体はそのほぼすべてが、デルタ株を認識する力を維持していたという。
研究チームは、ワクチンによって産生された抗体と、新型コロナウイルスの従来株と4つの変異株(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)について調査。その結果、従来株を認識する13種類の抗体のうち12種類は、デルタ株とアルファ株を認識した。4つの変異株すべてを認識した抗体は8種類。いずれも認識できなかったのは、1種類だった。
さらに、13種類の抗体のうち、従来株を中和(無力化)することができたのは5種類で、これらはデルタ株に対しても、中和能を維持していた。このうち3種類には、デルタ株に加えてアルファ株に対する中和能もあったという。4つの変異株すべてを中和する抗体は、1種類だけだった。
つまり、デルタ株は感染を広げる力が強くても、抗体による中和を回避する力が従来株より強いわけではないということだ。論文の最終著者(共著者)である同大学のアリ・エレベディ准教授(病理学・免疫学)はこの結果を受け、「デルタ株は、比較的弱いウイルスだといえる」と述べている(ベータ株は、複数の種類の抗体による認識も中和も、回避することができた)。
エレベディ准教授は、「デルタ株のように容易に感染を広げ、ベータ株のようにより強い耐性を持つ変異株が現れていたら、私たちはより深刻な問題を抱えていただろう」と説明する。