「人の縁」で地方創生。三重のスーパーシティ特区にできたVISONとは

東京ドーム24個分の土地に、さまざまな施設が集まった商業施設「ヴィソン」


「内田さんにお声かけいただいて、三重に通うようになりました。“美しい村”というその名前の通りの村になって欲しいです。ただ、山を切り崩している部分は気になっております。そこは、良きお店と良きお客様がここに集い、お店側が気持ちの良い場所を作ることができれば、伊勢の神々も迎え入れてくださるのではと思います」(石村)

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「多くの気(いのち)を育む場所」


最後に、ミナ ペルホネンだ。手作業の図案によるオリジナルデザインのテキスタイルが人気で、VISONではミュージアムとショップを展開する。原画やプロダクトと共にものづくりの過程や背景、デザインに込められた想いなどをミュージアムで堪能することができる。デザイナーの皆川明氏の解釈はこうだ。

「洋服は完成させたものをご覧になって購入いただきます。今回のミュージアムでは、ものづくりの背景や込められた思いを表現しています。展覧会の巡回はこれまでやっていますが、ショップとミュージアムが常に一緒にあるかたちは今回が初めてです」


「ミナペルホネン」デザイナー皆川明氏

「ファッションの世界では、大量生産や大量廃棄といった、様々な構造的な課題を抱えています。それが、着る人が作る人の背景を理解したり、作る側もそのこだわりを丁寧に着る人に伝えることで、少しでも長く愛用していただくことに繋がるのではと思っています」

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「私も皆さん同様に内田さんとの繋がりからお誘いいただきました。日頃から親しくさせてもらっている皆さんと、こうやって同じ場所でショップを出すことは初めてなのかなと、そういう意味でも楽しみでおります」(皆川)

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デザインされたホテルや風呂といった、箱モノでの地方創生はこれまでにもあった。理屈から考えると、多くの地域が必要と感じるコンテンツである。しかし、そこに止まらず、地域課題も解決するスーパーシティ特区としての立場を表明し、新しい村を作っていくのが多気町だ。

ただ、これもDXが一般化した昨今では、コンサルからも提案しやすいコンテンツである。豊かな山海の幸に恵まれた三重県ではあるが、そのほぼ真ん中に位置する多気町は、緑あふれる町となっている。そして、その文字のように、古来より「多くの気(いのち)を育む場所」と言われてきた。内田氏を中心に個性的なショップがこの地に集まったのも、“気の流れ”があったからかもしれない。

ここに地方創生のヒントがあるのかもしれない。非科学的な分析では身も蓋もない話となってしまうが、より多くの“気”を感じ取れる世界観が、VISONにはあった。人が人を呼ぶというシンプルな構図が、成功への一歩となるのかもしれない。

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上沼祐樹◎編集者、メディアプロデューサー。KADOKAWAでの雑誌編集をはじめ、ミクシィでニュース編集、朝日新聞本社メディアラボで新規事業などに関わる。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科を修了(MBA)し、大学で編集学について教えることも。フットサル関西施設選手権でベスト5(2000年)、サッカー大阪府総合大会で茨木市選抜として優勝(2016年)。

文=上沼祐樹 編集=石井節子

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