ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


ラスベガスで起きた警官による誤逮捕事件


とはいえ、警察官による不法行為の犠牲になった人の反発は、コロナ禍などの暗い社会状況も反映してか、以前よりも強くなって現れている。

折しも、ラスベガスでは少年の遺体が砂漠に捨てられて、犯人が緊急指名手配されるという事件があった。

遺体から生前の写真が合成され、それがニュース速報に掲載されたことにより、それを見たある女性が「わたしの子です!」とショックのなかで警察に電話をした。

ところが、実はこの女性は写真の少年を自分の息子と勘違いしており、当の息子は父親と一緒に隣の州のキャンプ場で山岳キャンプをしていたという。

キャンプ場が携帯の電波の届かないところだったので、父親に連絡がつかず、このような混乱となったらしいが、家に戻ってきた父親は150人の警官に取り囲まれ、拳銃も向けられて逮捕され、武器を所持していないかと公衆の面前で上半身を裸にされたという。そして息子はまるで強奪されるように父親の手から警官に奪われて警察署に緊急搬送されるという顛末となった。

初めは称賛の目が警察に向けられたが、一変して、ずさんな捜査と慎重さを欠いた強引な行動により1人の人間の人権を奪ったとして非難轟々となった。もちろん、ニュースを最後までフォローしない人間はいまだに父親が犯人だと信じ続けるというお定まりにもつながり、この父親にはいまだに脅迫メールが送られるなどしているという。

警察の誤捜査や誤認逮捕は過去にも掃いて捨てるほどあるのだが、連日新聞の一面を飾るほどの扱いを父親が受けたのは、やはり警察の不手際であることと、誤解された本人が白人でなかったことが関係していたと言い切っても差し支えない。

ほんのひと握りの不良警官やひとつのミスのために、警察官全体の信用が傷つけられるのはけしからんという意見はいつでもあるが、警察官という職そのものがこのように世間から徐々に尊敬の念を失っていくというのは深刻な状況でもある。

そういえば、警察官を主人公にした映画の製作が、ハリウッドでも少なくなったような気がするが、そう感じるのは筆者だけだろうか。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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